キャメル色のいかにも高価そうな皮のジャケットとズボンをよく着ていた男の子。
小学生に似つかわしくないその服装は、引率してくる祖母の好みかな。
祖母曰く、大阪では梅田にビルをたくさん所有し、
彼の両親はビジネスに忙しく、
孫息子の面倒はまかされているとか・・・。
どこまで真意かはわからないけど、どうにも影のある表情が最初から気になっていた。
小学校高学年にしては、かなり礼儀正しい。
でも、、、、、笑わない。
グループレッスンの中にいたけど、あまり他の子たちとも、はしゃがない。
当然、彼の弾く音楽はおもしろくない。
ひらべったい、ダイナミクス(音量の変化)のない演奏。
これは、いかん!
どれだけ練習して完璧に弾けても、感情が出ない!
まるで、「僕は譜面どおりに弾いてます」みたいな音楽しかできんようになる!
そこで、私は目標を設定。
彼を笑わせる!!!(笑)(笑)(笑)
クラスのみんなが爆笑するような場面でも、いつもひとり、クスリともしないので
だんだんこちらも意地になって。
どうしても笑わせてやる~!
「今日も笑わんかった・・・」
「これもおもしろくないか~?」・・・次のレッスンでも、またその次も・・・
数か月経過し、ついにその日は来た!
私のジョークに彼が、「ぶふっ」と吹いてしまったのだ。
自分でもバツが悪かったのか、あわてて口をおさえた彼。
そして、その日を境に・・・彼は変わった。
何かふっきれたように
彼の顔が「ふつうの小学生」の顔になった。
感情が音に出るようになった。
友達とも会話するようになった。
アンサンブルではやっとクラスの一員になれて、ハーモニーを奏でられるようになった。
元気だろうか?
もう30歳を過ぎたくらいだろうか。
今なら、キャメルの皮のスーツ、かっこよく決まってるんじゃないかな。