昨年10月にベニー・グッドマンへのトリビュート作『ランニング・ワイルド』をリリースし,Billboard Japan 「Jazz Top Albums」第1位を記録した山中千尋さんのトリオ・ライブへうかがいました。
山中さんといえば小誌でも人気連載エッセイ「山中千尋の日々 day by day」。上品な文体の中にもピリッとスパイスのきいたジョークや,山中さんならではの独創的なジャズ界への提言が好評でファン急増中です。
さて,今宵のトリオは「肉食系の山中さんに草食系の須川崇志さん(b),岡田慶太さん(ds)」(山中さん談)という次世代のニッポン・ジャズを担う布陣で始まる前からワクワク。
ステージでは<シング・シング・シング><ジャイアント・ステップス><エビデンス>などのスタンダードを情熱的に,また浮遊感のあるボイシングをクールに使って山中風に見事にアレンジ。自作曲との差が全くなく,全て山中さんの楽曲の様な素晴らしい演奏でした。
演奏もさることながら,山中さんのライブで面白いのはブラック・ユーモアたっぷりのトーク。この日もホワイト・デイにかけて矢継ぎ早にジョークが炸裂しました(ちょっとここでは書けない内容も…気になって仕方ない方は山中さんのライブへ足を運んで下さい)。山中さんにとってこの日,3月14日はホワイト・デイではなく,円周率の日だそうで,「帰宅後に円周率の計算をしてみます」と数学界への進出をにおわせる発言に,少し大人し目の観客も爆笑。 また,キース・ジャレットの<ペイント・マイ・ハート・レッド>を演奏する前には,山中さんがYouTubeで見つけたキースのお行儀の悪い発言の数々について言及。
今回のライブで山中さんの人気の秘密を再確認することができました。ピアノの腕だけではなくトークの腕も一級品,アメリカでもこのトークはウケること間違いなしだと確信しました。
(編集部・あずきざわ)