時の砂が落ちる速度に変わりはない筈なのに、惜しくて過ぎて欲しくない時間ほど、あっと言う間に流れ落ちて行くみたいに感じる。
特に侑さんと結ばれてからの時間は、とても高速で過ぎて行った。それがまた切なくて、俺は出来る限り彼の見える距離に居るようにしていた。
好きな人を直に感じられる、あの身体を繋ぐ行為は、とても恥ずかしいけれど魅惑的で、本音を言えば毎日だってしたかった。
だけど侑さんからはあまり誘って来る事はなく、俺が強請った時にだけ、聞き入れて抱いてくれると言うスタンスだった。
それに対して、疑問や不安は特に無かった。侑さんは基本的に恥ずかしがり屋で控えめな人だったから、遠慮したり気を遣って誘わないのかなと俺は考えていた。
丁寧に過ごしていたつもりなのに、気付けば帰国の日が明後日に迫っていた。俺の知る限り、帰国前日になると侑さんは翌日の事を考え、多分俺に触れて来ない。
今夜が最後のつもりで、俺は侑さんの部屋のドアを叩いた。程なくしてドアが開き、彼が姿を見せると同時に、俺は甘いキャンドルの香りにふわりと包まれる。
「君の事だから、今夜は来てくれると思ってたよ。祥君」
「侑さん……」
小さなキスを繰り返しながら、もどかしいほどじれったく丁寧に。俺の着ている物を優しく脱がせる彼の横顔は、少し痩せたように見えた。
そのことを聞こうとした矢先に唇を塞がれ、微かな疑問は覚えたての快感に呑まれ、形を失くして忘却の彼方へと消えてしまう。
彼とこうして抱き合った数は、数えてみれば決して多くはない。けれど、彼はそのほとんどを、とても優しくそして丁寧に俺を扱ってくれた。
それはまるで、お父さんの遺した大切なカメラを扱うように。良く言えばそうだけど、悪く言えばどこか他人行儀にも思えた。
いや、そんな筈はない。彼は俺を大切にしてくれてるだけなんだと、俺は何度となくその小さな不安を打ち消し、頭の中から追い出しては無かった事にしていた。
「……大丈夫、祥?キツくない?」
この人の何処かに、一片でも嘘があるだなんて、考えたくない。
「大丈夫。いつまでもこうして、繋がって居られたらいいのに……」
「そんなに可愛い事を言われたら困る」
「ごめーーーー」
「愛しくて離したくなくなってしまう」
この夜、いつもより力強く侑さんは俺を抱いた。 疲れ果てた俺が眠りに就く前、微かな囁きが俺の鼓膜を揺らしたのは、気のせいだったのだろうか?
“ずっとーーーーて、ごめんね”
つづく