20250306





雅紀が仔猫を預かって来た。


一晩だけらしいが、こんな小さな仔猫、大丈夫なんだろうか?


『ままぁ、ままどこ?』


仔猫はゲージの中でうずくまり、小さな身体を震わせて泣いている。 


『雅紀、仔猫が泣いてるぞ。何とかしてくれ』


「はいはい。お待たせ、ピーちゃん。ほら、ミルク作って来たよ」


『やだやだ!しらないおじちゃん!』


ぶはっ!知らないおじちゃんて言ってる。確かにそうなんだけどウケるわ。くくくく。


俺が腹を抱えて笑っていると、雅紀は横目で俺を睨んで、恨めしそうに話し出した。 


「帰省する友達が、まだ小さ過ぎて連れて帰れないって困ってたから預かって来たんだよ。笑いごとじゃあないんだから、翔ちゃんも協力してよね」


『あれ?雅紀はピーちゃんの声は聞こえないのか?俺の声は聞こえるんだろ?』


「そう言えば、翔ちゃんの声だけ聞こえる。やっぱり愛の力ってやつなのかな?良かったね、翔ちゃん」


満面の笑みが眩しくて、俺は「あはは」と笑う。コイツに言わせると、何でも愛に繋がってるんだな。きっと頭の中には、たくさんの花が咲いているに違いない。


『それにしても「ピーちゃん」って、猫の名前にしては珍しいな』


ようやくミルクを飲み始めたピーちゃんは、哺乳瓶を頬張り、小さな前脚で哺乳瓶を押さえながらミルクを飲んでいる。


「ああ、ホントは「ピーチ」って言うんだよ。だから「ピーちゃん」なの」


雅紀は、手のひらに乗せた仔猫を優しい瞳で見つめて、小さな頭をそっと撫でてやっている。


お腹がいっぱいになったからか、仔猫はとろんと半目になり、雅紀の手を舐めたり引っ掻いたりして甘えている。


それを見ていたら、何となく腹が立って来た。何だよ、雅紀の奴デレデレしやがって。俺の事はそんな風に撫でたりしないくせに!


どたどたどた(怒ってる足音


「どしたの?翔ちゃん。何か怒ってる?あ、もしかしてヤキモチ?」


『ハッ!そんな仔猫にヤキモチなんて妬いてねえわ!』


どどどどどど(ダッシュで逃げた


「……翔ちゃん。俺、翔ちゃんのそう言う分かりやすいとこ、結構可愛いと思ってるよ。面倒くさいから言わないけどね」


などと雅紀が呟いていた事を、キッチンに逃げ込んでいた俺は知らない。





おしまい