家政夫のカウルさんは、午前7時から午後2時迄なので、夕食後の片付けは、いつも侑さんと俺が2人でしている。
片付けが大体終わったところで、侑さんが寝室に消えたなと思っていたら、色んなカットケーキを乗せた銀のトレイを持って、キッチンにやって来た。
「わあ、このケーキどうしたんですか?何のサプライズ?え、まさか、もしかして俺の卒業祝い?」
「当たり。よくわかったね。お酒は無いけど、ジュースで乾杯しよう。お皿とフォークを持って来てくれる?」
「はい!」
リビングのムーディーな間接照明の中、キャンドルライトも灯して、侑さんが俺の卒業を祝い、グラスを片手に笑みを浮かべている。
「祥君。卒業おめでとう」
「ありがとうございます」
グラスを合わせ、泡立つジュースを口に含む。冷たいけど、爽やかな香りがして心地良い。俺が林檎のケーキを選ぶと、侑さんは洋梨のタルトを選んだ。
綺麗なケーキは、ビックリするほど美味しくて、あっと言う間に無くなってしまう。だけど、勿体なくて残りは明日の朝食べる事にした。
カウルさんにも食べさせてあげたいと言うと、侑さんは俺らしいと笑う。その笑顔は以前より柔らかくなっていて、俺の胸は内心ずっとドキドキしまくっている。
食べ終わってから温かいお茶を淹れると、俺達は何となく離れがたくて、リビングのソファーに並んで座り、顔を寄せ他愛のない話をしていた。
「そう言えば祥君。僕、読唇術が出来るんだ」
と言う侑さんの意外な特技を聞くまでは。
「読唇術?それって、口の動きを読むことが出来るって言うアレですか?」
侑さんが頷くと、意味深な顔で俺を見つめて微笑む。俺は昼間の事を思い出し、思わず自分の口元を押さえていた。
聞こえてないと思って、思いっきり言ってたあの告白。全部読み取られてたって言うこと?だよな?
「聞こえないと思って、ああして告白してくれたんだよね?だから僕は、気付かないフリをしてた方が良いのかなってずっと考えてたんだ」
何をそんなに考えていたのだろう?
嫌われてはいないと思っていたけど、やはり気持ち悪かっただろうか?
そう考え始めたらいたたまれなくなって、俺はこの場を逃げ出そうと立ち上がりかけた。ところが、思いがけないほど強く腕を引かれ、俺は勢い余って侑さんの胸に飛び込んでしまった。
つづく
