*『言葉の募金箱③』読者の方からもらった言葉を使って何らかの作品を作るシリーズ。今回は以下の言葉が集まりました。2025.12.08

紅茶
夜空
ありがとう
開花
湯気
クリスマスツリー
柚子の香り
健やかに
こたつ
除夜の鐘
感激



ーーーーーーーーーー



ここは世界の最果て、
空の上まで届く高い山の雲の上。


そこには、地上での役目を終えた人々が、天に向かう前に一服する『手前茶屋』がありました。皆ここで天国で暮らす為の準備をするのです。


茶屋の外観は一見、アンティークな硝子の温室に見えます。しかし、その門扉を潜って一番奥の部屋に入ると、そこには古めかしく立派な長テーブルが、どんと鎮座していました。


テーブルから少し離れた場所には、もう大晦日だと言うのに、しまい忘れられたのかクリスマスツリーが、華やかなオーナメントを纏って立っています。


「これが茶屋?変わってんなあ」


本日1番目にやって来た小野智史は、青いケースに納めた釣竿を傍の茂みに隠し、テーブルに向かいました。


すると何も頼んでいないのに、いつの間にかテーブルの上には、優雅なティーカップが置かれ、ポットにたっぷり入った紅茶が、温かそうな湯気を立てています。





「柚子の香りだね、美味しそう」


覚えのある声に振り向くと、グループの仲間だった佐倉、藍葉、三宮、竹本がぐるりとテーブルを囲んで座っていて、皿の上に並んだお菓子を笑顔で食べ始めていました。


「皆んな来てたんだ」


懐かしい笑顔に安堵した小野は、急いで残っていた椅子に座ると、その温かさに驚いてテーブルの下を覗き込みました。


すると、太陽の欠片が幾つも並んでいて、テーブルの下で足元を温めてくれています。なるほど、これは神のコタツと言うわけか。


「天国の手前にこんな茶屋があるなんて、やっぱり神様って良い人なんだなあ」


見上げる夜空には満天の星が瞬いている。そして、温室の中ではサガリバナや月下美人が、所狭しと競うように開花し始めています。


「百花繚乱だな」


感嘆の声を漏らしたのは、ラップ担当だった佐倉だ。しかし、さっきまで老人だったのに、今は一番美しかった頃の彼の姿に変わっている。どうやら、天国ではその姿で過ごせるようだ。


ティータイムのお茶と菓子を5人が平らげると、食器類はポンと消え、今度は5つの朱塗りのお椀が並んでいた。そう言えば今夜は大晦日だったなと小野は思った。


「5人で年越し蕎麦を食べられるなんて、凄い感激だよね。90歳まで生きられたし、人生の三分の一は嵐だったし。ほんと、神様ありがとうございました」

「そうだな、俺なんて92で終了だったよ。長かったけど振り返るとあっと言う間になっちゃうんだよな。ん、やっぱこの蕎麦最高」

「来年も健やかに暮らせますように」

「俺達し…まあいいか。天国で健やかに暮らしたいもんな」


全員でひとしきり大笑いして、思い出話に花を咲かせた。年越し蕎麦から活動終了前に行った蕎麦屋の話になり、今はお孫さんが跡を継いでいるようだと盛り上がった。


「あ、除夜の鐘だ」

「すげえ、下から聞こえて来るの新鮮」

「ほんとだ。あ、そうだ!神様。こんな時間を設けて下さってどうもありがとうございます」

「来世もまた、皆んなに出逢えて縁が出来ますように」


1人が手を合わせると、残りのメンバーもそれに続いて手を合わせる。皆、同じことを考えているようだ。


「「蕎麦のお代わり下さい!!」」

「「そっちかよ!」」


智史は4人がツッコミ合うのを見ながら(これからもずっとこうして、5人で笑っていられたらいいな)と、改めてそっと胸の内で願った。




おしまい✨





今回は比較的使いやすい言葉が多かったと思います。しかし“除夜の鐘”には一瞬うっとなりました。

“紅茶”が出されたのでお茶会にするしかないなと思っていたのですが、そこに“湯気”と“柚子の香り”が来て益々お茶会しか無いなと思って組み立てていました。

ところがそこに“除夜の鐘”。
何とかしたけど悩みましたねえ。何故か天国に行く手前の茶屋と言うものが浮かんだので、そこで大往生した彼等が待ち合わせているイメージをしました。

いつまでもこんな風に、わいわいしてて欲しいなと言う願望です。こういう設定が苦手だったらすみません。ここまでお読み頂きありがとうございます。

そう言えば、毎回『ありがとう』と言う言葉があるんですよ。誰かしら言って下さるんですよね。いつも素敵な言葉をありがとうございます。参加して頂き、感謝感激雨嵐でした!


眞白