付き合っている恋人、それもしばらく会えていなかった相手の手を舐めるなんて、誘っているとしか思われないだろう。
実際、俺はそのつもりだったし、その先のことも期待しての、行為に誘う為のトリガー的な甘えでもあった。
俺のことをよく解っている智史さんは、俺の言いたいことをちゃんと汲んでくれたみたいだ。
ホテルの部屋に入ると、強請るより先に俺の唇は彼の唇に塞がれ、深く強引に貪られる。飢えていた身体は、全身でそれに応え歓喜した。
◇
智史さんは俺より10も年上で、逢野智史と言う大手ライバル事務所の人気俳優だ。バラエティ番組で何度か共演したのがきっかけで仲良くなり、付き合うようになったが、仕事で顔を合わせても、あまり話す事は出来ない。
彼を好きになってしまって、最初のうちはよく悩んだり迷ったりして、戸惑うことが多かった。特に性的な事に関して、自分が受け容れる側なんだと気付いた時の動揺は大きかった。
そんな俺の心と身体に、彼は時間をかけ、ゆっくりと確実に愛されると言うことを教え、快感を深く刻み込んで行った。
◇
数ヶ月ぶりのキスに眩暈がして、彼の背にしがみつく。お互い思うことは同じのようで、足早に浴室に入ると、浴槽にお湯を入れ、その間に服を脱いで湯船に飛び込む勢いで熱いお湯につかった。
「あったかい……」
「雨に濡れて冷えちゃったもんな。ちゃんとあったまるんだぞ。その間に洗ってやるから」
「嫌だと言ってもするんでしょ?」
「俺が君のこと構うの好きなの、知ってるだろ?久しぶりなんだから、おとなしくしてて」
俺だって、ここで押し問答なんて色気のない事をする気はない。せっかく会えた大好きな人に、今は少しでも触れていたいのだ。背中から抱き寄せられ、彼の腕の中に収まる。
濡れた体が密着して、冷え切っていた身体が温度を上げていく。泡だらけの悪戯な指先が、俺の身体のあちこちを、好きなように泡と一緒に撫でて楽しそうに動き回っている。
「もっと」と言う前に、指先は敏感な胸の先端に移動して、カリカリと猫のように爪先で引っ掻き、遊び始めた。思わず小さな声が出て俺は無意識に身を捩る。
俺の反応に気を良くしたのか、智史さんはもう片方の手も出して来て、空いていた左の胸の先端をこね回し始めた。ここまでされると、雰囲気は一気に官能的なモードになっていく。
俺は振り向いて智史さんの首に腕を絡め、濡れた身体に身を寄せ、もう一度唇を重ねて行った。
つづく