毎日分刻みの仕事を詰め込み、苦手な仕事もかろうじてこなして、色んなことを我慢して我慢して。そうやってなんとかもぎ取った“夢の5連休”。



その貴重な休みに、大好きな人と2人きりで過ごすべく星空の綺麗に見えると言う高原の湖近くのホテルを予約して、キャリーケースに荷物を詰め込んで。



彼とは別々に東京から出てチェックインして、部屋に入って窓を開けようとした途端に、大粒の雨が降り出した。



アイドル、桜田秀(さくらだしゅう)。

雨男と呼ばれ始めてから、もうずいぶん経つ。



「……ああ、やっぱり降って来たな」



後から部屋に入って来た同性の恋人、小野原智史(おのはらさとし)が俺を抱きしめ、窓の外を見上げた。



「智史さん、ごめんね。せっかくの休みなのに……」



「雨は秀くんのせいじゃないだろ?気にしなくていいよ。覚悟もしてたし」



「だって、せっかく半年も前から予約して、休みだって合わせて。星空を一緒に見ようって、俺もずっと楽しみにしてたのに」



俺はもう半泣きで瞳が濡れて潤んでいる。それは彼にとっては、雄のスイッチを押す魅惑的な材料でしかないのだが。そんなところにまで頭は回ってない。



智史さんに言わせると、窓枠を指先で掴んで、ぎゅっと唇を噛む俺の横顔は、哀愁を帯びて儚く、そして壊れそうな美しさを併せ持つ人形のように見えるそうだが、例えが綺麗過ぎて大丈夫なのかと焦る。



「なあ、秀くん?そんなに星空が見たいなら、俺が見せてやるよ。おいで、一緒に行こう」



日に焼けた目尻に皺を寄せ、智史さんが白い歯を見せて甘く微笑む。たったそれだけで、ぐずぐず言っていた俺の機嫌が直って、胸がとくとくと乙女みたいな音を立てて鳴り始めた。



(だけど、この雨の中、本当に星空が見えるって言うんだろうか?)



先に外に出た智史さんが傘を広げると、バタバタと雨粒が激しく打ち付けて来る。こんな大雨の中、一体彼は何処へ行こうと言うのだろう?



レインコートを着せられると肩を抱き寄せられ、しばらく湖の畔を歩く。辺りはもう暗くなりかけていて、広く顔の知られた2人が寄り添って歩いていても、雨のせいか誰も気付かない。



まあ、そもそもこの雨で、せっかくのリゾート地にも関わらず、肝心の人がほとんど居ないのだが。



俺は嬉しくなって智史さんと手を繋ぎ、雨の中を小走りに駆けた。そして彼に案内されて着いたのは、山中を真っ直ぐ横切る一本の道路だった。







つづく