『お前のことが好きだから……』



あれから、何度となく大野の夢を見た。

違う。厳密に言えば、大野にキスをされる夢だ。それも、やたら甘い雰囲気で、恋人同士みたいなの。

目が覚めてからも、夢の中で交わしたキスの感触が、あの日触れた唇の柔らかさが忘れられなくて、俺は自分の唇を触る癖がついてしまった。

「チッ……」

これじゃあ、まるで俺が大野の事を好きみたいじゃないか。そりゃあ、全然意識してないかと言うと、それは嘘になってしまうのだけれど。

かと言って、好きかと聞かれると、どう答えていいのかよくわからない。この、よくわからないと言うのが、好きと言われればそうなのかもしれない。

だけど、これじゃあまるでキスされたから好きになったみたいで、なんだか負けたような気がして悔しい。てか、これはもう好きになってるのか?

えっ、あんなことで好きになっちゃったのか?俺ってそんな安易な奴だったわけ?ええと、ええっと……。

寝ても覚めても、ずっと彼の事を考えている。やはりそれは、すでに恋だと言えるのではないだろうか。

くるくる、くるくる。

夢の中の彼は、いつも綺麗な指先で地球儀を回す。そうしていつしか、俺を乗せた馬の手綱を握り、背後から俺を抱きしめ、凛々しく馬を走らせている。

俺はうっとりとその手綱捌きに見惚れながら、目がハートになってるんじゃないかと言う勢いで彼を見つめている。夢の中の大野は、頼んでもないのに、日に日にカッコよくなっていた。

毎日そんな夢を見続けた俺は、ひと月経つ前に耐えられなくなって、大野をあの学習室に呼び出すことにした。

もうとっくに、自分の気持ちは自覚していた。
あんなきっかけだったが、俺は彼に惹かれている。

海外暮らしの経験のある大野は、俺のことをからかっただけなのかもしれない。

それでも俺は、胸の内に熱く育ってしまった、形の無いこの想いを、もう仕舞っておくことなど出来なくなりかけていた。





つづく