*【sweet】とは、『恋する乙女日記』の中で智が相談に行った、アルコールを出さないお店。
初めて入るお店は、あまり人見知りしない人間でも、やはり少しは緊張するものだ。
「いらっしゃい。おや、初めて見る顔だね。ようこそ、酒の無い呑み屋へ」
「こんばんは。知り合いが紹介してくれたので、寄ってみたんです。ほんとにお酒無いんですね」
眞白は、やや緊張しながら、けれど素直に思ったままを口にしてみた。
「ここに座って、メニューをどうぞ。すぐおしぼりをお持ちしますね」
「ありがとうございます。あれ?おしぼり2つも?良いんですか?」
「今日も暑かっただろう?座ってゆっくり汗を拭くといいよ。そのままだと汗が冷えて身体が冷えるからね。ところで飲み物はどうする?」
おしぼりの片方は冷えていて、もう片方は温かい。心配りに驚きながら眞白はメニューに目を滑らせた。
「りんごジュースをお願いします」
「了解。ちょっと待ってね」
するすると林檎の皮を剥く店主の器用な手仕事を見ながら、そう言えば子供の頃、林檎の皮剥きをする時、長さ比べなんかしてたなと、眞白はぼんやり思い出していた。
「お嬢さん。名前を聞いてもいいかい?それと、うちのこと、誰に聞いて来たかも」
コースターを置き、その上にジュースの入ったグラスを乗せると、店主は柔らかく微笑む。
「眞白、川口眞白です。ここは、同僚の看護師の男性に聞いて来たんです。私、お酒が飲めないんですけど、おつまみとか雰囲気が好きで」
「ああ、大野君か。最近見ないけど元気そうだね」
「はい。あ、そうだ、ここに行くって話したら、大野さんからスイートさん宛にお手紙を預かって来ました」
「大野君から?わざわざ私に?それはきっと、良い話だね」
手紙を開けてもないのに、白い封筒を受け取りながら微笑むスイートの顔を見て、本当に大野さんの言った通りだなあと眞白はつくづく感心していた。
つづく