《翔》


青野は俺をイかせた=満足させたと思っていて、身体を繋いだ事で恋人になったと思い込んでいるようだった。


しかし俺は、特定の相手を持つ事を面倒だと思っていて、特に受験が終わるまでは恋人を持つ気はなかった。


「付き合うとは言ってないだろ」


翌朝ホテルを先に出ようとして、青野に見つかり、俺は再び引き止められていた。本気の奴は厄介だ。


「……他に気になる奴でも居るのか?」


ストレートな問いに、思わず足が止まる。一瞬、頭の中に浮かんだのは、義弟の雅紀の顔だった。


「翔ちゃんは、今頭の中に浮かんだ奴の方が気になるんだ……」


否定してしまえばいいと思った。だけど、それでも青野にはバレてしまう気がするから、口に出せなかった。


「沈黙が肯定になるって、今の翔ちゃんだよな。なんで俺の事1番好きじゃないのに、俺に抱かれたりなんかしたの?」


当たり前の疑問だと思う。けど、実は青野が2番と言うわけでは無い。


「……よく、わからなかったんだ。雅紀は弟だし、そんな風に考えて無かった。聞かれて初めて、自分の中に雅紀が浮かんだ事に驚いた」


チッと青野が舌打ちして、俺を引き寄せるとベッドに寝かせて伸し掛かる。


「もしかして、俺が追い詰めて余計なコト気付かせちゃった?あーあ、せっかく結ばれたってのに。俺ってただのセフレなの?」


「はあ?そんなつもりじゃあ……」


「身体の関係だけなら、そうだろ?」


「どうしても勉強と恋愛の両立が出来そうに無いんだ。相当勉強しなきゃいけないから……ごめん」


「もういい。わかったよ」


「へ?どう言う意味?」
 

「俺をセフレ(恋人候補)にしてくれ。それならギリ良いだろ?翔ちゃんは俺以外のヤツとシたけりゃずればいい。俺もそうする」


言いながら、青野の手はするすると俺の服を剥いで行く。せっかく着たのに、もう台無しだ。


「青野って、無茶苦茶な事言うなあ……」


俺が思わず笑うと「誰のせいだと思ってんだ」と、肩を落とした彼がようやく笑って。


ああ、この笑顔が好きになったきっかけだったなと、キスをされながら思い出したら涙が溢れて頬を濡らした。


「翔ちゃんって、本気の小悪魔だよな。ったく、ズルいなあもう……」


「だって……」


「だったらチェックアウトまで、もう一回天国にイこ♡」


「……うん♡」 


こうして俺たちは、
セフレ(恋人候補)と言う関係になった。


大きな声では言えないし、
言わないけれど。




つづく