*『君への想い』その後
「これ、秋人(あきと)宛の手紙」
不意に彼から渡された一通の真っ白な封筒。
「誰から?差出人の名前が無いけど」
「読めばわかるって」
「それはまた思わせぶりな」
女か男か?恋文か恨み言か?
心当たりがあり過ぎてわからない。
便箋を広げると、桜の形の型押しがいくつも並んでいて、もしかしたらと思う人が居た。
親愛なるアキへ
お元気ですか?
ご無沙汰しておりますが、如何お過ごしでしょうか?僕は相変わらず忙しく過ごしています。
貴方に出会ってからの僕は、色々と変わったらしく、けれどそれは、この世界で生きるにはとても必要性の高い『大人の色香』とか『柔らかな雰囲気』とか、これまでずっと、自分には無いと思っていたものでした。
お陰様で、これまでには無かった仕事のオファーも増えましたし、仕事の幅も広がって、念願の仕事をついにできる事になりました。
つきましては、◯月*日の月曜日、午後11時から宵闇チャンネルを観て頂ければ幸いです。
S・Sより
追伸:彼のギプスに書いてくれたメッセージ『Ti auguro una vita lunga e felice』とても嬉しかったです。だけど、あの人、1年も経ってから教えてくれたんですよ。さすがに酷くないですか?ほんと困ります(苦笑)
「…………誰だった?」
「あの子だった」
「ああ、5人グループの。で、何て?」
「番宣かな?テレビ見てくれって」
「そんな事でわざわざ?まさか」
「あ、このチャンネルだ。けど、なんだろう?インタビューでもされたのかな?」
『こんばんは。ニュース宵闇、今週もよろしくお願い致します。本日から新しいキャスターが入りまして、ご紹介します。**グループの佐倉翔さんです!』
「ニュースキャスター?凄い起用だね」
「……ああ、良い顔してるな。落ち着いてるんだ、良かった」
「秋人、お前まだ彼のこと……」
「何言ってんの?ヤキモチなんて珍しい」
不服そうな彼の唇をそっと塞ぐと、彼はリモコンを取りテレビを消す。
素直じゃないなと、思わず笑って。それはお互い様だと瞼を閉じた。
おしまい