《祥》
侑さんは、こうと決めたら行動の速い人だ。ニュースを見てから2日後、俺のスマートフォンに知らない番号から着信があった。
普段なら知らない番号からの着信に出る事はない。しかし、この電話は取らなければならないと思った。
「もしもし……」
『突然すみません。佐々倉祥さんですか?私、医師の二宮と申します』
相手は侑さんの主治医で、一緒に暮らしているパートナーだと言った。付き合っている恋人ではなく、もっと深い関係の繋がりと言う事なのだと、俺はそう受け取った。
侑さんに、俺ではない別の近しい存在が居ても、俺は驚いたり傷付かなかった。寧ろ(むしろ)主治医がパートナーで良かったと言う安堵の方が大きかった。
1週間後に、うちの近くのカフェで会う約束をして、智史さんの同席も了承してもらうと、俺は智史さんにそれを告げ、当日の同席をお願いした。
「同席していいのか?俺はいいけど、祥ちゃんは話しにくくない?」
智史さんは俺を気遣ってくれるけど、俺はそれより彼に頼みたい事があった。
「智史さんが居てくれた方がいいんです。俺がちゃんとあの人に“サヨナラ”出来るように」
「それならいいけど、1週間て先だな。何でそんな先にしたんだ?」
「……今の俺は智史さんが好きです。だけど、あの人に会っても少しも揺らがないでいたい。その為にも、貴方ともっと強く繋がっていると思いたい。こんなお願いは、はしたないかもしれないんですけど、それまでに俺を貴方のものにして下さい」
考えてた事だけど、口にするのはめちゃくちゃ恥ずかしい。顔が熱くて、まともに彼の顔が見られない。
「それで祥ちゃんの不安が軽くなるって言うなら、遠慮しないけど。本当にいいのか?」
「寧ろ告白してから、いつするのかなって、ずっとドキドキしてる俺の方が馬鹿みたいですよ」
「今のセリフもう一回言って」
「はあ?イヤです」
「ああ、すげえ可愛かったのに」
「……智史さんのそう言うの、俺、慣れられそうにないです」
「慣れなくていいよ。可愛いから」
ニコニコと嬉しそうに笑って、智史さんが小さなキスをする。
「マジでやめて下さい。ほんとに…まさか先輩がこんなに甘い人だったなんて」
離れようとした俺の腕を掴んで、今度は指先にキスをする。この人、本当に俺のこと好きなんだなと思った。
「それは祥ちゃんの鈍感力だろ。俺はずっと祥ちゃんにだけ甘かったのに」
見つめられて、見つめ返すと、彼の唇がやって来て俺の唇に触れる。
「今日明日休みだよな?」
キスの合間に智史さんが俺に確認する。
「俺より詳しいですね」
思わず笑うと、智史さんも笑って。「家族みたいなもんだからな」と、俺の髪をくしゃっとかき混ぜた。
つづく