《祥》


翌朝、早く起き過ぎてしまった俺は、リビングのラグに座り込んでテレビを観ていた。


と言っても何もまともに見てやしない。何故なら昨夜の事、いや、先輩の事で頭がいっぱいだからだ。  


昨日、俺は小野先輩の事を考えていて、彼の俺に対する気持ちだけでなく、俺が先輩を好きになっている事にも気付いてしまった。


部屋に帰って来てから、先輩にプレゼントを渡して、俺が気付いた事を話して、お互いの気持ちを確かめてから、キスをして……そのままベッドに座って、またキスをした。



じゃれ合う小鳥みたいなキスが、どんどん深く愛しさと想いを募らせて行く。先輩の唇が俺の唇から離れ、耳朶を舌先でなぞっては甘噛みされる。


「……あ、っ!」


堪え切れず首を反らすと首筋を吸われ、服の下に入り込んだ手が這い上がると胸粒を摘む。漠然と不安が込み上げ、俺は必死で先輩を見上げた。


考えてみればシャワーも浴びてないから、身体の準備もしてない。このまま最後までしてしまうのは、出来れば避けたかった。


俺の戸惑いに気付いた先輩が「仕方ないなあ」と言いたげに俺の上から降りて横になる。そして後ろから俺を抱きしめ、結局そのまま俺は朝まで眠ってしまった。


キスして一緒に眠っただけで、それ以外は何もしてないんだけど、ゆっくりでいいよな。俺達は俺達らしく居られれば……て、小野先輩と俺は、恋人って事でいいんだよな?


改めて考えたらドキドキして来た。先輩が起きたら聞いてみよう。その時、テレビ画面に思いがけない映像が映し出された。


『今をときめく人気カメラマンの青嵐こと成瀬侑さんが、本日入院治療を終え、無事退院される事になりました』


車椅子に座って柔らかく微笑むその顔は、忘れもしない懐かしいあの人だった。


「侑さん……」

『これまで青嵐として、本名も顔も出さずに活動して来られたのですが、今回は骨髄を提供して下さったドナーの方に感謝を伝えたいとのことで、公開に踏み切られたとのことです』


骨髄の移植。血液の癌だ。


『一時はドナーが見つからず、諦めかけていたんです。けれど、ギリギリのところでドナーが見つかって、その方には本当に感謝しています。どこの誰かはわからないのですが、心より御礼申し上げます』




時々。どうして侑さんが、どことなく焦っていたのか。哀しそうな顔をして笑っていたのか。何も言わず俺との連絡を断ったのか。


すべての答えを、俺にも届くようにして、あの人は教えてくれたのだ。




つづく