本当にあっと言う間の2週間だった。


「お世話になりました」


玄関を出て外に踏み出すと、俺はキャリーケースを脇に立てて振り向く。


見送りは侑さんだけだった。カウルさんは気を利かせてくれて、先に挨拶を済ませている。


「祥君、元気でね」

「はい。侑さん、また日本で会いましょう。俺、待ってますから」

「うん。写真、いつか届けるよ」

「楽しみにしてます。じゃあ、え?」


まさか、外に出てからキスをされるなんて思わなかった。侑さんは、そう言うの恥ずかしいって……。


そこだけ世界から切り取られたみたいに、何も聞こえなくなってしまう。


深い灰色の空から、羽毛みたいに柔らかな雪が夢のように降り注ぎ、儚さを纏わせるみたいに俺達を包んで行く。


離れ難くて、離したくなくて。 
もう二度と会えない恋人同士みたいに、俺は彼を、彼は俺を求める。


このキスが、本当に侑さんと交わす最後のキスだなんて、真実を知らされていなかった俺が、知る由も無かった。




こうして俺は、済州島での夢のようなアルバイトの生活から、先に1人で日本へと帰国する。


日本に帰ってからの事を思うと、俺の胸はとにかく弾んでいた。侑さんと行きたいところ、侑さんとしたいこと。侑さんと話したいことも、まだまだ沢山ある。


ところが、成田空港に着いてから送ったメッセージに返事がない。


《侑さん、無事に日本に着きました!》


何かしているのだろうと、俺はそんなに気にしなかった。けれど、その日の夜になっても、翌朝になっても、彼からの返事が来る事は無かった。






つづく