「……ん、りょ、さ……も少し、ゆっ、んっ」



翌日から、まるで教えるみたいに、侑さんは何度も俺にキスをした。



キスはこうやってするんだよと実際にしてみて、俺が真似てお返しをする。それを繰り返しながら、俺は侑さんに慣れ、彼とのキスに慣れて行く。



そうしている間にも、侑さんが写真を撮るのを忘れる事はない。



寝起きの俺の、寝癖だらけの顔とか、撮ってて楽しいんだろうか?と思ったりもしたけど、なんせ侑さんが楽しそうにカメラを構えてるから、それなら良いかなって思えた。



歯磨きしてたり、ご飯を食べたり、窓辺に佇んでみたり。だけどモデルって、実際にはもっと大変なんだろうなと思う。これで何回も着替えたりメイクするなんて信じられない。俺には到底無理だ。



「……あの、侑さん?」


「何?祥君」


「俺の事撮ってて楽しい?」


「そりゃあ楽しいよ。だって、俺の好きな人を撮ってるんだから……そのまま、じっとして。うん、いい顔してる」



『俺の好きな人』だって。侑さんがこんな事言ってくれるなんて、まるで夢を見てるみたいだ。  


「ふふっ」


どうしても頬が緩んで笑ってしまう。


「嬉しそうだね」


「うん、すごく嬉しいです。好きな人に好きになってもらえるのって、こんなに嬉しいものなんですね」


「それはそうだよ」


「侑さん」


「何だい?祥君」


「俺のこと、好きになってくれてありがとうございます」



そう言うと、侑さんは俺の側に歩み寄って来て、愛おしそうに頬を撫でる。くすぐったさに思わず笑うと、彼は掠め取るみたいなキスをして「お礼を言うのは僕の方だ」と、目尻に皺を寄せて嬉しそうに笑った。





暖房の効いた部屋の中は先取りした春のように暖かくて、もうすぐ3月だからか陽射しも何処か春めいている。素肌に白いセーターとジーンズだけだったり、着ている物が少なくてもそんなに寒くは無い。



侑さんが笑っていて、それが心から楽しそうに見えたから、俺はそれだけで満足だった。俺の世界は侑さんでいっぱいで、こんな日があと1週間も続くのかと考えたら、楽しみでしかない。



きっとこのモデルのアルバイトは、俺の人生の中でもとびきり素敵な思い出になるんだろうなと言う、何処か確信めいた自信が胸に在って、俺はそれを信じて疑っていなかった。



撮影の合間にキスをしているのか、キスの合間に撮影をしているのか。俺達はまるで子猫みたいに、くっついたり離れたり戯れあいながら、ずっとお互いを見つめ笑いあっていた。







つづく