くんくんくん(鼻をひくひく
何かいい匂いがする。
何の匂いだろう?
甘くて、香ばしくて、ちょっぴりしょっぱくて。バターの香り?
『わあ!フレンチトーストだあ♡』
「あ、フカフカさん起きたんだ」
『フレンチトースト大好き♡何々?なんで作ってくれたの?クリスマスだから?あ、雅紀の誕生日だから?』
「今日は俺の誕生日だから、俺もフカフカさんも好きな物を作ろうと思って。一緒に食べよ。ん?どしたの?」
『雅紀。俺、何も用意出来てないんだ。ごめんな』
「今はオコジョだし、仕方ないんじゃない?それより、このリボン引っ張ってくれる?」
雅紀は笑って、俺に綺麗なリボンの端っこを持たせる。『えいっ!』と、思い切り引っ張ってみたら、それは上手い具合に解けて、中から赤い手袋が姿を見せた。
『この手袋……』
俺が欲しかったやつだ。しかも、ちゃんと雅紀の物まで隣に並んでる。
『どうして?なんで?』
「そりゃあ、あんなに耳元できゃあきゃあ言ってたら、さすがに俺だってわかるよ」
『あじがどお〜』涙目
「うひゃひゃ!翔ちゃん日本語崩壊してる」
それから俺は、大好きなフレンチトーストを皮切りに、いちごや唐揚げを食べて、それからまた眠ってしまったようだ。
次に目が覚めたら、俺は人間に戻っていて、雅紀が俺の髪を“愛しくて堪らない”と言う顔をして撫でていた。こんな風に触れられたら、俺だって愛しさが募って仕方がない。
「……雅紀」
名前を呼んで瞼を閉じると、誘いに乗ってくれた彼が、遠慮がちに口付けてくれる。そんなキスじゃない、俺が今欲しいのは、もっと深く頭の芯が痺れるみたいな。
「ん、う、んっ!あ、うっ!」
目の前が滲んで、雅紀の輪郭も滲ませて行く。彼の素肌に触れるのに服が邪魔で、俺はそれを引っ張りながら雅紀と一緒に脱がせて行く。
プレゼントの包装を解いて行くみたいな、ドキドキとワクワク。そんな事を感じているのは、俺だけなのかもしれないけど。
お互いの肌を合わせてようやく、お互いに納得したように感じた。いつもならオコジョ に戻る事を想定して、すぐ身を繋ごうとしてたけど。なんだか今日は、このままでいい気がする。こうしているだけで満たされるから。
雅紀の差し出す腕に頭を乗せると、2人並んで天窓の向こうの空を見上げる。しばらくすると、微かなベルの音が近付いて来て輝く4頭のトナカイ達に引かれるソリが空を横切ったように見えた。
「誕生日おめでとう。雅紀」
「ありがとうございます」
貴方の(君の)願いが叶いますように。
(人間に戻れますように)
(フカフカさんが翔ちゃんに戻れますように)
2人の気持ちと願い事が同じだったこの夜。奇跡が起きていたなんて、誰一人気付いてなかった。まさか本当に願いが叶うなんて、思ってもみなかったんだ。
つづく