*『シャーベット』番外編
駅近の小さなショッピングモールの文具店で、俺は色とりどりの折り紙の並んだ棚を前に、腕組みをして首を捻っていた。
先に下のフロアにある100円均一ショップで買おうと、折り紙を見て来たのだが、どうしても納得出来ず、この文具店まで足を伸ばしたのだ。
1枚あれば足りるので、最初は100円の折り紙でいいだろうと考えていた。安価でデザインも豊富だし、実際、パッと見て綺麗な物は沢山並んでいた。
しかし、何故か全く買いたいと思えなかったのだ。無理矢理レジに持って行こうと一度は手にしたが、脚がレジの手前でUターンしてしまうと言う奇妙な事になる。
はいはい、100円均一はダメなんだな。と、自分に言い聞かせながら、上のフロアに向かうエスカレーターに乗り、ここに来て今に至るわけだ。
ところが、この文具店には美しく珍しい折り紙が豊富に揃っていて、今度はそれで悩むことになった。千代紙、美濃和紙、越前和紙、伊予和紙など、値段もなかなかのものである。
正直、中に包むのが「アイスのスプーンが入っていた紙袋」なので、高級和紙を使うのはどうかと思う。ただ、自分が持ち歩く事を考えると、和紙1枚でも心から納得する物を使いたいと思った。
しばらく悩んで、10枚700円ほどの青い千代紙ばかり入った物に決めた。支払いを済ませて、テーブルのあるイートインコーナーに向かう。あそこでなら、折り紙をカットして小さな紙片を包むぐらい出来るだろう。
幸いペン型のハサミなら持ち歩いているので、割と簡単に折り紙を使った御守りもどきが完成し、俺はそれを改めて財布のポケットに仕舞い込んだ。
それから、残った折り紙をどうしようか考えていた時、近くに居た女の子がぐずぐず言いながら泣き出した。どうやら折り紙が欲しかったのに、買ってもらえなかったようだ。
良かったらと差し出すと、女の子は泣き止み笑顔になる。母親は恐縮して何度も頭を下げていたが、自分としても引き取り先が見つかって助かったのでとイートインを後にした。
帰りに相葉さんの居るコンビニに寄り、シャーベットを2つ買う。支払いの時に御守りに気付かれるかと思ったが、大丈夫だったようで安心した。
「二宮さん、なにかいいことありました?今日はご機嫌ですね」
「あったと言えばあったかも。でも内緒です」
俺達は顔を見合わせると、ふふっと笑って挨拶をして別れる。けど、そう言えば俺と相葉さんは、もう店員と客ではないような気がした。
おしまい*