*『シャーベット』続編




《和也》





櫻井さんが話してくれた事をまとめると、俺は割と“可愛い”とか“綺麗”な部類に入るらしい。


だから、智義兄が大切にし過ぎて、手を出せなくなってしまったのではないかと言う事だった。


「信じられません」


今までそう言う事を言われた覚えはないし、変な男の人につけ回された事があるくらいで、女の子にモテた事もないから、可愛いや綺麗ってのは、縁遠い言葉でしかなかった。


「これでも信じられない?」


手鏡を渡され、渋々覗き込んで俺は言葉を失くした。見た事のない俺が鏡の中に居る。


「これが俺?」


確かに、この顔には見覚えがある。さすがにいくら何でも自分の顔ぐらい覚えている。ただ、その表情がやけに甘ったるくて、何とも言えない幸せそうな顔をしている。


「櫻井さんて、もしかしてカリスマ美容師なんですか?俺、すごく綺麗に見えるんですけど」 


「それは、和也君が元々整った顔立ちをしてるからだよ。俺は、君が持ってる本来の良さを引き出しただけで、特別何かをした訳じゃないんだ」


「でも、これじゃあ、まるでシンデレラみたい」


「なら、俺は魔法使いってとこか」


「舞踏会はとっくに終わってますね」


俺の言葉に櫻井さんが頷き、俺達は顔を見合わせると、悪戯っ子みたいに笑った。


「なあ和也君。舞踏会は終わっても、王子様は待ってるかもしれないよ?」


不意に真顔に戻って、櫻井さんが言った。


「でも…………」


智義兄の事だと言うのは、すぐにわかった。でも、時間はもう午前2時半になろうとしている。こんな時間に帰って、迷惑じゃないだろうか?


「確かめてみるといいよ。お義兄さん、多分眠れてないと思う」


そう笑って櫻井さんは、かぼちゃの馬車ならぬタクシーを呼ぶと、俺をその中に押し込んだ。






つづく