卒業式の後、
親友と訪れた河川敷の桜の下で。
俺は思い切って、胸のボタンをくれと親友に告げた。
「ボタン?いいけど……」
そう言って彼は胸のボタンを外すと、俺の手のひらに乗せて微笑む。
鈍く光るその小さな銀色のボタンを、俺が目を細めて見つめていると、不意に顎を掴まれ、上を向かされた。
薄淡い桜の花びらが、吹く風に乗って空高く舞い上がる。
「……大野?なんで?」
キスなんか、したんだ?
「卒業するまでは、親友でいようと決めてたんだ。けど、俺達もう卒業しただろ?」
どうして、そんなに愛おしくて堪らないみたいな表情をして、俺のことを見つめるんだ?
「櫻井、これから先の俺の人生、全部くれてやるから、お前のこれから先を、俺にくれないか?」
一瞬、言われた事の意味が理解出来なかった。数秒経って、我慢出来ずに涙が溢れ出す。
「泣くなよ。これじゃあ、まるで俺が悪者みたいじゃん……まいったな」
弱り果てた彼が可愛くて、今までよりずっと愛おしく思えた。
返事は、なんて言えばいいだろう?
抱きしめられた腕の中で、俺は泣きながら笑っていた。
『俺の残りの人生、全部お前にやるよ』
これからもずっと、
俺達は一緒に歩いて行く。
肩を並べ、寄り添い、
同じ未来を目指しながら。
何処までも。
おしまい
お休み前の置き土産です✨またね。