「……智様。私もお慕いしています」
ショウの口から出たその言葉を聞いた時、飛び上がりたいほど嬉しかった。けど、ショウの様子が辛そうなのが気になって、よくよく彼の身体を見たら、足首から先が消えて無くなっていた。
「ショウ……もしかして、俺、ショウのことを好きになってはいけなかったのか?その足、何が起こってるんだ?頼むから教えてくれ!」
俺は取り乱して叫んだ。また彼を失ってしまうのかと思ったら、居ても立ってもいられなかった。
「禁忌を犯した罰なのです。私は砂塵となり、モロッコの砂漠に還って砂粒のひとつになる。それだけです。東京にご一緒出来なくて、申し訳ありません……本当は、ずっと貴方と一緒に生きてみたかった」
儚げに浮かべた微笑みが腕の中ですべて砂塵となり、俺の手をすり抜け、一粒残らず窓の外へと出て行ってしまう。
「待ってジニ!人間に戻って俺の側に居て!俺の最後のお願いだよ!」
手のひらに残っていた砂粒を握りしめ、俺は懸命に最後の願いを口にする。他の願い事なんてどうでもいい、たったひとつ、この願いだけが叶えば良かった。
けれど、その願いが叶ったような気配は、何も感じなかった。彼を抱きしめていた腕は、大切な温もりを失い、どんどん冷えて行く。
俺は、空になった両方の腕で自分を抱きしめ、シーツの上にパタパタと零れ落ちる涙を止められなかった。唇を噛み締めても堪え切れず、嗚咽が漏れた。
どうして、俺達にはこんな結末しか無いのだろうか?“また”俺はあの人を助けられなかった。それどころか自ら追い詰め、砂塵にして消してしまった。
「これじゃあ、何の為に出会ったのかわからないじゃないか」
共に生きる為に、出会ったのではなかったのか?ショウ。
彼の為にと買った布団を抱き締め、俺はろくに眠れないまま次の朝を迎えた。淡い水色の空に透き通るような白い月の浮かぶ、幻想的な朝の空だった。
今にも消え入りそうなその月は、砂となって消えてしまった彼を思い出させた。けれど、消えてしまったとしても、きっと彼は何処かで見守ってくれている。
彼は消えてしまったと言うのに、
何故だか俺の胸に淡い希望が、微かに芽生えていた。