ダンスを続けたくて芸能人になると決めていた俺は、高校に通い始めても部活動には参加せず、1人公園なんかでダンスの練習をしていた。
その頃は使い勝手の良さで、わざとCDプレイヤーで曲を流して踊ることが多かった。当然周りにも音は聞こえている。
周りに馴染もうとしない(と言うか目標が違い過ぎて話が合わなかった)俺は、他人から見れば、さぞかし勝手で生意気な新入生に見えただろう。
だけど、俺の事が気に入らない一部の人間が、俺の事を痛めつけようと隙を狙っているなんて、そんなこと考えたことも無かった。
その日も、授業が終わると、俺はいつもの公園と言うか空き地に来て、CDプレイヤーの音を聞きながら踊っていた。
頻繁に映像が見られる訳じゃないから、記憶の中のダンスを辿って、身体を見よう見真似で動かしているだけに過ぎない。
ダンススクールに通って一から基礎を学んだ事もない。だから、時々これでいいのかわからなくて不安になる。けど、やらなければ確実に身体は動かなくなる。
一息入れようと座ってCDプレイヤーを止めた時、俺は数人の学生に取り囲まれた。何事かと辺りを見回すと、どう見ても話の通じなさそうな、汚い茶髪の奴が薄笑いを浮かべている。
「東京から来た、一匹狼の大野智って言うのは、お前の事なんやろ?」
「……一匹狼かどうかはわかりませんけど、東京から引越して来た大野智なら、俺で間違いないと思います」
「なんや落ち着きくさって、可愛げが無いなあ」
「そんなつもりは無いんですけど」
咄嗟にジニを呼ぼうとした。
けど、巻き込みたくなくて呼ぶのを止めた。すると、彼等はまず最初にCDプレイヤーを踏みにじり、壊して使えなくしてしまった。
「何すんだよ!」
慌ててCDプレイヤーの破片をかき集めてみたけど、それが絶望的に直らないであろう事は、機械に詳しくない俺にも直ぐにわかるほど、酷い破損具合だった。
「お前、生意気やねん」
「はい?それが、CDプレイヤーを壊した理由ですか?」
「そうやて言うたら?」
「貴方にこのCDプレイヤーとCDの弁償なんて出来ませんよね?特にCDはマイケルジャクソンの最新盤なんですけど……」
「弁償?俺が壊してへんし、弁償する必要なんか無いやろ」
「なんだと!?」
俺がそいつに掴みかかる前に、他の奴が俺とそいつの間に割って入り、俺は綺麗にストレートパンチを喰らって後ろに吹っ飛んで行く。
俺の中の何かが、
ぶつりと音を立てて切れた。
つづく