俺がメガネをやめたのは、それからひと月ほど経ってからの事だった。そろそろ大丈夫だろうと、高橋とも相談してから、俺は久しぶりにメガネ無しでいつもの番組に出たのだが。


放送中からSNSでは「櫻井アナが可愛すぎる」と騒ぎになり、「ついに恋人が出来たのか?」など、多くの当たらずとも遠からずなコメントが錯綜していた。


その数日後、俺はある居酒屋の奥の個室で高橋と酒を酌み交わしていた。俺も彼女も酒に強くて悪酔いする事が無い。また、酔って迷惑をかけたりかけられたりが大嫌いだ。そう言う価値観が近いこともあって付き合いやすいのだ。


今日は大切な用事があった。


「はじめまして、高橋と同期の櫻井翔です。こちらは、恋人の大野智です」


「はじめまして、櫻井と同期の高橋花(はな)です。そして、お付き合いしてる斉藤真奈(まな)です。よろしくお願いします」


「まさか高橋とお互いの恋人を紹介することになるとは、考えた事もなかったなあ」


「ほんと。私まで関西に異動とはねえ。櫻井とはこれからも友達だと思うのよ。だから、真奈には紹介しておきたいと思って。時間作ってくれてありがとね」


「すみません。私が櫻井さんの事で不安になって花に当たってしまったりしてたから、ごめんなさい」


高橋の恋人は同性なのだ。それでこれまでも安心して友達付き合いが出来ていたのだが、恋人は本当に可愛い女性だった。これは、高橋でなくとも目を引くだろう。


「お気持ちは、わからなくもありません。俺だって彼に女友達が居たら不安になると思いますから」


「ありがとうございます。私も、花について行けたら良かったんですけど、突然の話だったので、二の足を踏んでしまって……」


「無理はしないで。私なら大丈夫だから」 


「気持ちが離れる訳じゃないのは、信じられるんです。ただ、花は仕事に夢中になって無理し過ぎる事なんかも心配で」


高橋の事をよく理解している、良い恋人なんだなと思うと微笑ましかった。そして、俺は良い同期に恵まれたなと言う事が改めて嬉しかった。





つづく