これから?頭が追い付かない。俺達は両想いだったってこと?だよな。いや、それだけじゃない。俺達は今も同じ想いなんだ。
そうして、その日のうちに俺は彼に抱かれて、自分が本当に愛されていた事を身を持って知ることになる。それまで、想像でしかした事のなかった行為は、何もかもが頭の中とは全く違っていた。
彼の俺への触れ方から、どんなに彼が俺を愛おしく大切に思っていてくれたのかが伝わって来て、俺はそれだけで感動して泣いた。
すると、彼は心配顔をして、涙を拭っては俺の頭を撫で、髪を梳いては口付け、じっと待っている。それはそれは、愛おしいひと時だった。
身体から力が抜けて、胸の奥に抱えていたモヤの塊みたいなのが解けて溶けて行く。その代わりに、何か温かなものがちょっとずつ染み込んで来て、俺は満たされて行く。
俺は大好きな人から、俺と同じか、それ以上の大好きをたくさんもらって、モコモコの幸せで包まれたヒツジみたいになってしまった。
たくさん愛されて、一番欲しかったものをもらって。その日俺は、ある意味生まれ変わったのではないかと思う。
帰京した次の出勤日のこと。
「おはようございます」
「おはようござ!?い、ます」
ん?なんだ?今の「間」は?
「おはようございます」
「おはよう、ございます。ええっ!?」
んん?今度はなんだ?何なんだ?
「櫻井!櫻井!!」
「おう、高橋。おはよう」
同期の女友達だけど、俺を異性と思ってない高橋が手招きで呼んだ。
「おはよう、じゃない!櫻井、この連休中に恋人出来たでしょ?」
「なんでわかるん?お前、エスパーやったんか?」
「あちゃーやっぱりか。ちょっとこっち来て!早く!早く!ちゃんと鏡見て!」
引っ張って連れて行かれたのは、俺達が身だしなみのチェックをする大きな姿見の前。そこには、とんでもなく愛らしく可憐な一人の男が居た。
「……嘘やろ。これが俺?なんで?」
「櫻井、あんた幼馴染みに会いに行くって言ってたよね?上手く行ったんでしょ?今のあんたからは、そう言う愛されオーラがめちゃくちゃ溢れ出てるのよ。こんなの全国放送したら、大変な事になるわ。とにかく、今の櫻井は可愛すぎるのよ」
「そんな。俺、どうすれば……」
「メガネ持ってたよね?あれ使おう」
メガネをかけて高橋にチェックしてもらうと、少しマシだとOKをもらえた。
「櫻井」
「なに?」
「良かったね。おめでとう!」
「ありがとう」
心配してくれて、見守ってくれて、報告出来る友達がいる。それは本当にありがたい事だなと、この時思った。
こうして俺のメガネ姿はしばらく続き、SNSでは色々議論されたり、憶測が飛び交ったりもしたが、気にしてるとキリが無いので、そのうち俺は気にするのをやめた。
つづく