*『辺境の艦隊』23話辺りからの話。
二宮和也。
デビューしたてのアイドルグループの1人。グアムでの大掛かりなデビューイベントが終わってから、砂浜でなんとなく座って海を眺めていた。
なんだかまだ夢みたいで、現実感が全然ない。まるでゲームの中の別世界に居るみたいな気分だ。
グアムの砂浜は綺麗で、俺は体育座りをしてその砂を手で集めては砂浜に落として、サラサラと落ちるのを見ていた。
そのうち、掴んだ砂の中に鈍く光る物を見つけた。何かの部品だろうか?丸いけど角があって、ちょうど指輪みたいに見える。
指を通してみると、ちゃんとそれは指輪に見えて、何故だかとてもドキドキした。おかしい、女の子じゃあるまいし、やっぱり外そう!
ところが、いざ外そうとしたら、何故だかどうやっても外れない。困り果てていたところに、大野さんが声を掛けて来た。
「そろそろホテルに帰るって。二宮君、行こう」
ホテルに帰って、お風呂に入って石鹸を付けても、その変な指輪みたいな物は外れなかった。
「あの、大野さん。ちょっといいですか?これ、さっき砂浜で見つけたんですけど、なんか外れなくなっちゃって」
「指輪?そこまでキツそうには見えないけど、外れないって?」
大野さんが指輪に触れると、まるで魔法みたいに指輪は俺の指を離れた。
「あれっ?外れた!ありがとうございます」
「二宮。これ、も一回着けてみ」
「ええ?なんか嫌なんですけど、大野さんが言うなら……ほら、着けてみましたよ。あ、やっぱり取れない。なんなんだ?大野さん、お願いします」
どうやらこれは大野さんにしか外せないみたいだ。何故なのかは、わからないけれど。
「二宮、お前、これ見て何ともないのか?」
「何がですか?」
「いや、何でもないならそれでいいんだ……」
大野さんはとても哀しそうな顔をして笑う。その横顔が、酷くカッコよく見えて驚いた。
「二宮?」
背中から抱きしめると、大野さんは戸惑ったみたいだった。
「ごめんなさい、“軍曹”」
「えっ?“二宮先生”?思い出してくれたのか?」
「すみません。軍曹って言う言葉しか……」
「……もう俺泣きそう。泣いていい?」
「そう言う貴方は、どこまで思い出したんですか?」
「聞きたい?えっとお、まず初めてチューしたのはあーーーー」
ばちーん(平手で殴った
もう、なんで俺、この人のこと好きだったんだろう?昔の、いや、過去の俺の好みがよく分からん。
「二宮、今度はちゃんと俺になんでも言えるようになれよ。俺とそんな恋をしよう」
「何でそんなこと言うの?“また”好きになっちゃうだろ!バカ!」
「だって、好きになって欲しいもん」
くっ、可愛いが過ぎる。
めちゃくちゃ好き。
ほんとムカつくぐらい。
「もう好きになってんだよ!これ以上どうしろって言うんだ!」
「なんだ、じゃあおいでよ」
ポンポンと腿の上を叩いて俺を呼ぶ大野さんは、とても嬉しそうだ。俺が座ると確信している。
ぎこちなく座ると、ぎゅっと抱きしめられた。胸がバクバクして、恥ずかしくて泣きそうになる。
「この指輪、よく見つけたな。あれは昔、お前のために作った物だよ」
「砂浜で見つけたんだけど、大野さんがくれた物だったんだね。どうりで、懐かしいって思うわけだ……ところで、もう降りていい?」
「なんでだよ?まだちょっとしか」
「何か硬いのが当たってるのが嫌だ」
「そのくらい我慢してくれよ」
その後、言い合いになって、また俺は大野さんを殴ってしまった。だってあの人、すぐ触って来るから。
俺が大野さんに慣れて恋人らしくなるのは、もう少し先の話しになる。
【完】