休戦の7日間。
それは、翔一と雅人にとって貴重で、忘れられない日々になって行くことになる。
特別なことをした訳ではなかった。
しかし雅人の身を案じた翔一は、かいがいしく彼の世話を焼き、それを他に隠そうとはしなかった。
そもそも、いくらベッドが足りないからと言っても、大佐のベッドを貸し与えるなど、破格の待遇だ。
なので、大佐の本命が料理長だと言う事実は、割とあっさり艦内に知れ渡っていた。けれど、これについて異論を唱える者は居なかった。
料理長は元来の人当たりの良さと素直な分かりやすさで、大佐に惚れ込んでいたのはバレていたし、軍曹は大佐に対してずっと他人行儀だ。
一介の兵とてここは国境近くの海軍。しかも航空母艦の中でも大将と呼ばれる『飛翔』の乗組員達だ。皆、普段は呑気な顔を見せているが、馬鹿でも阿呆でもない、観察眼の鋭い一流の船乗り達であった。
昼間、翔一は自分の仕事と雅人の仕事を手伝い、兵達への声かけや気配りも忘れなかった。細波のようなその優しさは次第に兵達に伝わり、櫻井大佐に対する信頼は高まっていた。
夜になると、雅人は翔一に生い立ちを語って聞かせたり、家族や友の話もした。翔一にとってそれは温かく、けれど手の届かぬ憧れの世界であった。
恋仲とは言え、まだ2人は身体を繋いではいない。お互いそのことが気になってはいるものの、今は雅人の怪我もあって翔一からは口に出来ない。
雅人も、無理に翔一をどうこうしようとは思っていなかった。話を聞く限り、彼は甘やかされて育ってはいない。特に親との触れ合い等は乏しく、記憶に無いようだった。
だから夜になると、雅人は後ろから彼を抱きしめて眠る。彼は初日こそ落ち着かない様子だったが、雅人が手を出して来ないとわかると、逆に甘えることを覚えたようだ。
翌日から彼は振り向き、雅人の胸に顔を埋めて眠るようになった。雅人としては、懐かなかった犬に信頼してもらった気持ちである。
(この人って、意外と可愛い)
寝顔を見ては、何度となくそう思い、手を出してしまいそうになるのを堪えた。せっかくの信頼を失いたくはないし、ゆっくり眠らせてあげたい。
何より自分の代わりに様々な仕事をしてくれている彼を、大切にしたいし邪魔したくもない。翔一を深く知るに付け、雅人の想いは募って行った。そしてそれは、翔一も同じ想いであった。
穏やかな日々は過ぎるのが速い。
船上ならぬ艦上パーティの日が、もう目の前に迫っていた。
つづく