雅人は左肩から腕にかけて10数針も縫い、数日の安静を余儀なくされた。しかし、ある意味タイミングはとても良く、その翌日から7日間の休戦となった。



この休戦が終わったら、次は決着がつくまで終わらない気がした。そして、どちらの加勢している国が負けるかは、誰も口に出さないだけで、本当はもうこの頃には見えていた。



けれど雅人は、この予想外のひと時に心から感謝した。櫻井大佐ではなく、翔一と言う1人の若者と話す良い機会だと考えたからだ。



「すまない。ノックするのを忘れていた」



ドアを開けてから気付いたのだろう。翔一が部屋に入って戸惑っている。彼は上着を脱いでハンガーに掛け、少し思案してから雅人の側に来てこんな事を言ってくれた。



「何か不便はないか?シャワーも浴びられんから困るだろう。良かったら背中を拭いてやるぞ」



「大佐にそんなこと、させられません」



「しかし、君は私を庇ってーー」



そんな押し問答をしながら、最後には翔一が雅人の背中を湯に浸した手拭いで拭いてやる。ほんの僅かな時間だが、少しは言葉を交わせる。雅人は、そんな些細なことが、とても嬉しかった。



しかし翔一は、一通り背中や身体を拭くと、肩の傷の手当てをして、雅人から離れようとする。雅人はそんな翔一の腕を優しく引いた。



「相葉?」



「雅人です。翔一殿」


 

「……雅人か、ん、う」



今迄、恋人らしい事は殆どしてこなかった。大佐の恋人は大野軍曹だと、まだあの貼り紙を鵜呑みにしている者も多い。だけど、今は俺のものだと言う、嫉妬や独占欲があった。



「そう言えば、翔一殿。この手帳に書いてある“詩”は、やはり軍曹のことですか?」



「お前、いつの間にそれを」



「枕の下から出て来ました。それで、時間はあったので、読ませていただきました。すみません」



「勝手に見て勝手に嫉妬して……じゃあ、今の接吻は何だと言うんだ?そもそも、軍曹とは恋仲ではない。あれは俺を守る為の嘘だ」




「やっぱり。そうじゃないかと思ってました」



そう言って微笑む雅人は、もう一度小さく翔一に口付ける。



「お前、怪我の割に元気そうだな。休戦6日目にこの飛翔で“船上パーティ”をするから、メニューを考えてくれないか?」



「パーティ?そんなに材料あるかな?だけど、ちょっとはそれらしい物、考えてみますね」



「助かるよ。雅人……」



翔一からの初めての接吻。

それはあまりに甘美で、蕩けるように優しかった。







つづく