結局、大佐と俺の関係って、どうなったんだろう?
翌朝、そんな呑気なことを考えながら雅人は甲板で何時もの体操をしていた。すると、竹刀を持った翔一がやって来て、「おはよう」と恥ずかしそうに微笑み、隣で素振りを始める。
飛翔のあちこちに止まっていた海鳥達が、朝の海風に乗り高い空へと飛び立つ。寄り添いながら彼方へ消えて行く鳥達を、じっと見送る大佐の横顔が今にも消えてしまいそうに見えて、雅人は声を掛けることが出来ないでいた。
ゆっくり話す時間が欲しい。まだろくに彼のことを知らないし、自分のことも話していない。しかしこの頃戦況はあまり芳しく無く、敵の攻撃も本格化しているように思える。
雅人が立ち上がって大きく背伸びをしていた時、翔一の背後の空に黒い機影が見えた。機体には大きく敵国の国旗が描かれている。
「敵機襲来!!敵機襲来!!総員持ち場に着け!!」
サイレンが鳴り響き、兵がそれぞれの持ち場に走る。その動きは、日頃の彼等からは想像出来ないほど速かった。
「敵飛行機は6機!隼(はやぶさ)を狙っている模様!隼被弾しています!」
隼は、小型ながら攻防共に優れた、この艦隊の“盾”的な艦である。失えばその損失と影響は計り知れない。
「松本班はどうした?まだか?」
「今出ました!」
「もう応戦してる。さすがだな」
双眼鏡を握りしめた翔一が、感嘆の声を漏らす。敵機は次々と被弾し、煙の尾を引きながら海へ落ちて行く。
全ての敵機が沈むのを見届けた潤ノ介は、その海上を大きく旋回する。相手は、ついこの間まで菓子のやり取りをしていた気の良い兵士達だ。
彼等から届いた最後の菓子には、短い2つの手紙が添えられていた。
『戦場で会ったら迷わず撃て。俺達もそうする』
『もしも生まれ変わりなんてのがあるなら、今度はダチになろうぜ!』
海上を旋回する潤ノ介は、最高の敬礼をしている。その大きく美しい瞳には、熱く光るものが波打っていた。
この時、攻撃を受けた飛翔の甲板で、一人の兵が動けなくなっているのを、翔一が助け起こそうとしていた。その瞬間、敵機の銃口が火を吹く。
「危ない!」
負傷兵の上に覆い被さり、守ろうとしていた翔一を庇い、雅人が更に爆風から守ってくれた。
「相葉、なんて無茶なことを」
「咄嗟に庇うくらいは、惚れてるってこと……みたいですね」
ずるずると彼の身体が倒れて行く。その左肩には、爆風で飛ばされた木片が突き刺さっていた。
つづく