*魚屋の3代目とアナウンサーの2人。





一緒に暮らし始めて4ヶ月。


その日は、何となくお祝いしたい気分で、小さな純米吟醸とツマミ用の魚を買って、鼻歌を歌いながらスキップする勢いで帰宅した。


「ただいま〜。あれ?翔ちゃん?」


いつもなら居るはずの恋人の気配がない。何処かに出掛けるとは聞いていないが、何かあったのだろうか?


『急な仕事で出掛ける。ごめん』


冷蔵庫に貼られた走り書きの付箋に気付いて、彼にメッセージを送る。


『魚料理冷蔵庫に入れておくから。帰って来たら、一緒に食べよ』


すぐに可愛い『OK』スタンプが返って来て、俺の頬が緩む。明日は一緒に呑めるだろうか?


あまりアルコールに強くない彼に酒を飲ませるのは、ほろ酔いの彼がやたら色っぽくて愛らしいからなのだが、あまり言うと飲まなくなりそうなので黙っている。


一人で酒を飲む気にはなれず、適当にお茶漬けを食べて片付けていた時、テーブルの上のスマホが震え、耳慣れた着信音が鳴った。


「おお、翔ちゃん?どしたん?」


『ごめん。今日帰られへん』


「刺身作ろうと思ってたんやけど」


『あーそれ食べたかったなあ。けど、一人でもちゃんと食べや?』


「まあ、明日でも何とかなるし。それよりまだ俺の名前呼んでくれへんの?何回も呼ばんと慣れへんやろ?」


『智……うわあ!恥ずっ!おやすみっ!』


あ、切られた。
まあええけど。


「何がそんなに恥ずかしいんかわからん」


けど、その翔ちゃんが可愛くて、慣れなくても全然いいんだけど。とりあえず、何回も照れて焦っている彼を見て、俺は幸せを満喫している。


今夜も、君からもらった、あのハンドクリームを塗って眠ろう。






おしまい