20242201








赤い国のまだ小さな王子様は、クリスマスの準備をするのが、大層お好きでした。


中でも、大きなモミの木にオーナメントを飾るのが大好きで、毎年家臣達と一緒になって飾り付けをするのは、王子の何よりの楽しみでした。


今年も夢中になって飾り付けをしていたのですが、途中で少し疲れてしまった王子は、1人テラスに出て、はしゃぎ過ぎて火照った頬を、冷たい夜の空気で冷やしていました。


どのくらいそうしていたでしょう。
 

『もうすぐ雪が降るから部屋にお入り』


誰かの穏やかな声が王子に囁きました。
姿は見えないけれど、それはきっと妖精に違いない。王子は姿の見えない声の主に「ありがとう」と言いました頃。


それから「ちょっと早いけどメリークリスマス」と言うと、持っていた白いボールのオーナメントをテラスに置いてから、部屋に戻って行きました。


王子が居なくなったテラスに雪が舞い始めた頃、夜空色のマントを靡かせ、ヒラリと降り立った男が居ました。


男はテラスに置かれたオーナメントを手に取り、愛おしそうに頬擦りをすると、それを懐に仕舞い込んで微笑みました。


『王子、こんな物を無闇に知らない奴に渡してはいけないよ?特に、私のように、愛に飢えた生き物にはね』


部屋の中で走り回る王子は、男に気付きません。何故なら、王子には男の姿が見えないからなのです。


いつか、何処か違う世界で、もしも君と俺の世界が重なったなら。神様がそのチャンスを下さると言うのなら。


もう一度、俺と恋をしよう。


男が空を仰ぐと、背中には美しい漆黒の翼が現れました。男は堕天使だったのです。


『またな、ショウ』



白いボールのオーナメント。
意味は“純潔”。






おしまい*