熱にうなされながら、俺は懸命に考えていた。


どうすれば翔を救えるのか、どうすれば彼とずっと共に居られるのか。その為に何をすれば良いのか、何が必要なのか。


しかし、自分一人で考えていても、どうにも埒が明かないと悟った頃、渡りに船と言わんばかりに、果物を抱えた美丈夫が見舞いにやって来た。


「……松本。やはり俺は、恋をしているようだ。アドニス*のような、この世の者とは思えぬ麗しい少年に」
 

「ほほう。女にしては、贈り物のひとつも贈った話を聞かぬなと思ってはいたが。なるほど、そう言う事か」


「淑女で無くて期待外れだったろ」


「いや、お前の口からアドニス等と言う言葉を紡ぎ出させる少年だ。とんでもなく美しいのは十分伝わるさ。それで?何をまたそんな寝込むほど悩んでいるんだ?上手く行ってたんじゃなかったのか?」
  


「それが、実は…………」





「……大野。お前が『その男』呼ばわりしているその人は、櫻井財閥の影の立役者だ。しかし、実際には裏のボスとでも言うか、とにかく危険である事は間違いない」


「え、っ……?」


「お前、絶対その人に楯突いたり、変な正義感振りかざして意見するんじゃないぞ?」


「あ、ああ」


既に色々と言ってしまったことは伏せておこう。


「その子が大事なら尚更だ。お前が殺されでもしたら、その子はどうなる?何もかも生きてこそだろ?よく考えろ」


「……諦めろとは言わないんだな」


「俺が言って諦められるのか?そんな奴なら、こんな進言はせんぞ」


「もしかして、俺は素晴らしい友を持っていたようだな。ありがとう、潤」
 

「一言余計なんだよ。馬鹿野郎が」
 

「果物でも食べるか?」


「俺が持って来た物だろうが」


「そうだな。あはは」 


「呑気な奴だな。何にせよ、話してくれて良かったよ。友が突然死んだなど、戦争以外で聞きたくはないからな」   



神妙な顔で話す親友の横顔を見ながら、この時ほど松本の存在に感謝した事はない。


俺はこの日、漸く心から安堵して眠りに就き、それから程なくして回復して行った。






つづく

*『アドニス』
ギリシャ神話で美の女神に愛された美少年。