湊かなえ『境遇』 | applejamな休日

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せかせか暮らしてるのに、気が付けば何もせずに一日が終わってる…
ゆっくりとジャムでも煮ながらお休みの日を過ごしたいなぁ…
大好きな韓国のドラマや音楽、その他もろもろについて書いてます

2011年10月双葉社刊

 

 

 

 

政治家の妻であり、息子のために描いた絵本『あおぞらリボン』が
ベストセラーとなった髙倉陽子と
新聞記者の相田晴美は親友同士。
共に幼いころ親に捨てられ
児童養護施設で育った過去を持つ。

ある日、「息子を返してほしければ、
真実を公表しろ」とい
う脅迫状とともに
陽子の息子が誘拐された。
「真実」とは一体何なのか。
そして犯人は…


文庫本カバーより





朝日放送創立60周年記念ドラマのための書下ろし小説。
ドラマ化を意識してか、
物語は二人のヒロイン、
陽子と晴美、
それぞれの視点から交互に語られる。

章ごとに語り手が変わるという手法、
湊作品には多い。
先日読んだ『カケラ』もそうだったし、
彼女の代表作『告白』もそうだった。

登場人物がそれぞれの視点で語ると、
その人物が何を考えたり、
何を感じたりしているのかわかりやすい。
しかし、その反面、
その人物にとって都合の悪いことが巧妙に隠されていて、
読者はそのことに気づかないで、
いつの間にか、作者の術中にはまってしまう。
そのはめられた感覚がまた楽しいんだけど。

児童誘拐が扱われて、
作品をジャンル分けすればミステリーに分類されるのだろうけど、
本作は人と人とのつながりを強く感じさせる。
母と子、
妻と夫、
そして、親友同士。

湊かなえと言えば
「イヤミスの女王」と言われているけれど、
本作に関して言えば、「イヤミス」ではない。
読後感さわやかとまでは言わないけど、
「ホッとする」感じです。