宮部みゆき『きたきた捕物帖』 | applejamな休日

applejamな休日

せかせか暮らしてるのに、気が付けば何もせずに一日が終わってる…
ゆっくりとジャムでも煮ながらお休みの日を過ごしたいなぁ…
大好きな韓国のドラマや音楽、その他もろもろについて書いてます

PHP研究所 2020年6月刊



時代小説ミステリーにちょっぴりオカルト風味を加えて、
主人公は元気いっぱい、育ち盛りの少年と、
宮部みゆきのお得意をたっぷり詰め込んだ、

作者の集大成となるであろう作品。



第一話 ふぐと福笑い
 深川元町の岡っ引き、千吉親分がふぐに中毒って亡くなった。
 親分のいちばん下の子分だった北一は、
 親分の本業の文庫屋で行商をしていたが、
 家を追い出され、一人で商売を続けることになる。
 北一同様、追い出された千吉の妻、松葉。
 目の見えない松葉の将来を北一は心配するが、
 「おかみさん」には特別な能力があった…
 
  
第二話 双六神隠し
 手習い所に行くと言ってうちを出た松吉が姿を消した。
 遊び仲間の丸助が「双六のせいだ」と騒ぎだす。
 拾った双六で遊んだ松吉と丸助と仙太郎は、
 それぞれ「神隠し」「金三両」「閻魔の庁」のコマで止まっていた。
 松吉の失踪は果たして呪いの双六のせいなのか?
 気になる事件が起こったとき、
 おかみさんの考えを聞きたくて、北一はすぐ、報告に行く…


第三話 だんまり用心棒
 名の知れた菓子屋の次男坊、乙次郎が、
 うぶな糸屋の娘、おしんをたぶらかして妊娠させた。
 富勘に連れられて仲裁の席に同席した北一。
 とことんしらばっくれる乙次郎に腹が立ち、
 冨勘に何とかしてほしいと思う北一だったが…
 
 
第四話 冥土の花嫁
 いわい屋の跡取りの万太郎が再婚することになった。
 その引き出物の文庫を都合することになった北一。
 周囲の人々の助けを借りて、
 北一は立派な文庫を無事準備することができた。
 しかし、いわい屋の祝言の当日、
 万太郎の亡くなった前妻、菊の生まれ変わりだと言う娘が現れて…
 

 

 

 

北一が売り歩く「文庫」とは、

ここでは小物や書物を入れておく「文庫箱」のこと。

当時は行商が成り立つほど、

日用品としてよく売り買いされていたの?



時代小説には独特の言い回しや風物が出て来るので、
現代小説より読みづらい部分もあるんだけど、
一度、その雰囲気にはまってしまうと、
何とも言えない心地よさがある。


この作品は、北一の目線で語られるんですが、
北一の明るく素直で前向きな人柄が、
作品全体を爽やかなものにしています。
語り口も軽快でリズムがある。


北一を助ける大人たちのキャラクターもいい。


盲目のおかみさんはいわゆる「安楽椅子探偵」。
北一の話を聞くだけで、鋭い推理力を発揮する。


長屋の差配人、富勘は情に厚く、
大人の知恵も度胸もあるけれど、
出来のいい子に騙されやすいのが玉に瑕。



欅屋敷の用人、青海新兵衛は、
いつものんびりとお屋敷の雑用や留守番をこなしているが、
何かと北一を気にかけ、助けてくれる。



みんな若い北一を一人前扱いしてくれる、ありがたい人たち。
天涯孤独で不幸な生い立ちの北一だが、
周囲の大人たちが彼の成長を支えてくれる。
第四話で北一は、
いよいよ文庫屋として独り立ちすることになる。



そしてもう一人の「きたさん」、喜多次は、謎の多い存在だが、
彼も北一と接することで心を開き、
これから恐らく成長していくに違いない。


このシリーズは現在も連載中らしく、
これからも続編が読めるのがうれしいです。

『きたきた捕物帖』というタイトルからするに、

やがて北一と喜多次はコンビを組んで、

岡っ引きへと成長するのかな?
次回作が楽しみ、楽しみ。

 


 

『きたきた捕物帖』公式サイト