90年代にフジテレビ系で放送されていたドラマ『結婚の理想と現実』が、今でも深く心に残っている。
主演の中村雅俊さんと田中美佐子さんが夫婦役を演じ、文房具メーカーに勤めながら社宅で暮らすリアルな夫婦の日常を中心に物語が展開していく作品だ。脚本はヒットメーカーの伴一彦氏。毎週このドラマを観るのが、当時の私にとって大きな楽しみだった。放送当時、私はまだ中学生だったが、おそらく田中美佐子さんの魅力に惹かれて熱心に画面に齧り付いていたのだろう。
ストーリーの起伏も激しく、今思えば実に90年代らしい見応えがあった。中村さん演じる高野康彦は、伊豆での仕事のヘッドハンティングを受けながらも、家庭や会社を考えてなかなか一歩を踏み出せない。さらには、妻の朝子(田中美佐子)から部下の渡辺との不倫を疑われるなど、波乱の展開が続く。 最終的には、石田純一さん扮する芹沢が、部下の佐野との不倫の末にかとうかずこさん演じる妻・早紀を選んで海外へ行ってしまう。その煽りを受ける形で、康彦が海外事業部へ転勤となり、高野夫婦が関西へと転居する結末が印象的だった。そして、このドラマを語る上で欠かせないのが、ZARDのデビュー曲「Good-bye My Loneliness」が主題歌だったことだ。あの切ないメロディがドラマの劇的な展開をより引き立てていた。
しかし現在、この作品はDVDやVHSなどのビデオソフト化が一切されていない。本放送の終了後、フジテレビの地上波で数回再放送された記憶や、CSの「フジテレビONE/TWO/NEXT」で流れた記憶はあるものの、TVerなどの配信サービスで見かけたことは一度もない。
いつか配信される日が来るのか、それともこのまま「お蔵入り」になってしまうのかは不明だ。何が原因で配信できないのか、その理由が非常に気になるところである。時代背景の描写が今に合わないのか、あるいは出演者全員からの許諾(権利処理)を得るのが難しいといった、大人の事情があるのかもしれない。
ちなみに、田中美佐子さんと中村雅俊さんのコンビは、翌年に放送されたドラマ『しあわせの決断』でも共演している。この時は夫婦役でありつつ、田中さんが双子の姉妹を演じ分けるというユニークな設定だった。当時はお二方とも様々なドラマで色々な役者と夫婦役を演じていたため、記憶の中で他の作品と混同しそうになるが、やはりこの二人の空気感は格別だった。
90年代、中村雅俊さんも田中美佐子さんもドラマに引っ張りだこで、絶大な人気を誇っていた。特に中村さんは歌手活動も並行しており、多忙を極める日々を送っていたはずだ。そんな黄金期の熱量が詰まった『結婚の理想と現実』。あの頃のきらめきを、もう一度配信という形で手軽に味わえる日が来ることを願ってやまない。