本当は『River Deep Mountain High / Ring Of Fire』という長ったらしいタイトルですが、実はオリジナル作品の2枚組『Love Is』と全く同内容で(ただし曲順は変えてある)、ジャケットも変更され、おそらく70年代半ばくらいにドイツで再発されたレコです。この10年後にポリスで大ブレイクするアンディ・サマーズが参加しています。全9曲中“I’m Dying, Or Am I?”と“The Madman”以外全てカヴァーで成り立っていて、おまけに2枚組、さらに前作の『Every One Of Us』と前々作の『The Twain Shall Meet』も68年リリースでしたから、新曲を作るよりもとにかくアルバムを発表したくてたまらん!っちゅう… 創作意欲よりも露出欲の方が優ってしまった感じです。長尺ナンバーが多く、必然的にアレンジメントと演奏力に焦点を合わせた作りになっていて、全体になかなかの力作やと思います。“Gemini”~“The Madman”はほとんどウェールズのマンのようなプログレ・サイケな展開が出てきたり、同時期のヴェルヴェット・アンダーグラウンド(の2nd)を思わせる混沌としたサウンド展開になったりします。アイク&ティナのタイトル・トラック、スライ&ザ・ファミリー・ストーンの“I’m An Animal”、ビー・ジーズの“To Love Somebody”、トラフィックの“Coloured Rain”どれも濃厚なアレンジが施されていて、ちょっとクドいほどなんですが、エリックの全盛期といえるソウルフルなヴォーカルを楽しむことができます。ただし!スティーヴ・マリオットやスティーヴ・ウィンウッドやヴァン・モリソンのような同世代のブルー・アイド・ソウル・シンガーたちに漂うスマートさを求めてはあきません。もっとドンくさくてエゲツなくて過剰な、誤解を恐れずにいえばより黒人に近いヴォーカル・スタイルを求めるならこの人に決まり!っす。