ニューヨーク出身のオルタナティヴ・ロック・バンドのデビュー作です。このバンドのことはリアル・タイムでは全く知らず、30をとうに過ぎてからでしたね。きっかけは、シャーリー・コリンズ&アルビオン・カントリー・バンドがアルバム『No Roses』で取り上げた“Just As The Tide Was A Flowing”を彼らも取り上げていることに、シャーリー自身が驚いていたのを知った時です。私自身も大好きなトラッドのひとつだったので、いつか彼らのヴァージョンも聴いてみたいな~と漠然と思っていたところ、それから10年以上たってたまたま中古レコ屋さんでそのトラッドが収録されているこのデビュー作を安く見つけて手に入れたっちゅうわけです。おそらくこの当時、平均年齢二十歳そこそこのバンドだったはずで、世代的にはパンク/ニュー・ウェイヴからの影響を受けていると思います。REMと比較されたり、本人たちの好きなバンドのひとつがポーグスだったというところに当時の趨勢が表われてますね。ほんでもひとつ重要なのが、プロデュースを担当したのがジョー・ボイドだったことです。ジョー・ボイドといえば、インクレディブル・ストリング・バンドやフェアポート・コンヴェンションやニック・ドレイクのプロデューサー兼マネージャーだったという、英フォークロック界にとってはある意味親父的存在だった偉大な人っす。初期のシャーリー・コリンズのプロデュースもしたことがあるので、ひょっとすると“~Tide Was A Flowing”を提案したのもジョーだったりして。残りの曲は全て彼らのオリジナルなので、その線も大いにありますね。わかりませんが。パンク世代、二十歳そこそこのデビュー作、そしてアメリカ人という要素も関係しているのか、ここではそのトラッド含めて期待したほどの深みや渋さや陰りは感じませんでしたが、良質なフォークロックちゅうか、けっこうセンスのいいメロディを書くバンドだと思います。セカンド・アルバム以降も安く見つかればぜひ入手したいもんです。ヴォーカルのナタリー・マーチャントという人の声や歌唱は大変すばらしいです。例えていうならゲイ&テリー・ウッズのゲイ・ウッズのような爽やかタイプですかね。