英トラッド・シンガー/ギタリストのトレイラー・レーベルからのアルバムです。若い頃にオーストラリアに10年ほど住んでいたことで、主にその国の民謡を歌うようになったそうです。オーストラリアといえば、英トラッド・ファンにとってなじみ深い人物として、あのサンディ・デニーのダンナはんだったオーストラリア人のトレヴァー・ルーカスが思い出されます。サンディと結成したフォークロック・グループ、フォザリンゲイの唯一のアルバムには、このアルバムのタイトルと重なる“The Ballad Of Ned Kelly”というトレヴァー作のオリジナル曲も収録されていました。ネッド・ケリーというのはオーストラリアの歴史上のアウトローの名前で、19世紀後半の民衆のヒーロー的存在だったそうです。調べてみたらば、時代に翻弄された側面の大きい盗賊のようで、若くして処刑されるまでには悲惨だった生い立ちがあったり、冤罪や正当防衛に近い殺人などによって警察から目をつけられた人生を送っていたらしいです。強盗するにしても対象は庶民ではなく、いわゆる銀行や大地主からの略奪にかぎられ、貧しい人たちには手を出さないどころか、気前よく金を配ったりとかしていたそうです。それで庶民の中にも彼をかくまったりした人もいたそうで、いかにも民衆のヒーローになりそうな人物ではありますね。この手のアウトローでトラッド・ソングの題材にもなったといえば、中世のロビン・フッド伝説がありますが、これは時代が新しめちゅうことでもっと具体的かつ階級闘争的バラッドのひとつとなったようです。音楽的には英フォーク・ファンであればどストライクな内容やと思います。個人的には、まず大好きなコンサティーナの使用があげられますね。あとメロディの美しいトラッドが比較的多いこと、これめっちゃ重要っす。マーティン自身の歌声も非常に魅力的で、クレジットにないので正確なところはわからないんですが、全て本人が歌っているとすれば曲によって声を使い分けていて、浪花節的イガイガ声で歌うかと思うとマイルドでふくよかな声で歌ったりと、こういうところは大好きなニック・ジョーンズを思い出します。“Moreton Bay”、“The Cypress Brig”、“Farewell To Greta”が大きなメロディといい、歌い方といい、ニックそっくりですんばらしいす。B面の無伴奏トラッドが、聴いている間ちょっと他のこと考えたりするかもしれませんが、そこはアン・ブリッグスで修業しましょう。なんのこっちゃ。おわり