【レコ妖怪向けレビュー】

 

プリティーズの名作のUKオリジナル盤手に入れましたよ(SHVL 774)。EMI傘下のハーヴェストからリリースされたダブルジャケで、表裏がツルツルコーティング、モノクロの見開き部分にはメンバー5人の顔と全曲の歌詞が印刷されています。レーベル上に「EMI」のロゴのないやつなので、これは初回盤ということらしいです。実はこの作品のアナログ盤はずっとエドセルからの再発を所有していたんですが、聴くのはもっぱらボーナス・トラック付のやたらと音の鮮明なCDの方でしたね。で、初めてこのオリジナルを聴いたら、おお!アナログの丸い音!っちゅう感じでたいへん満足しました。スネアとベース・ドラムの音が本当に気持ちいいしベースもでかいので、腕達者なリズム隊がヒジョーに引き立ったサウンドやと思います。楽曲、演奏、サウンド、コーラスどれもが一級品、その上に善と悪を使い分ける緩急自在の魅力的なフィル・メイのヴォーカルが乗っかり、田舎と都会の対比をコンセプトとしたほぼ完璧なトータル・アルバムなのにほとんど売れず、このあと最初の解散を経験するわけです。トータル的な実力はありあまるほどなのに人気が追いつかなかったアーチストはたくさんいましたが、彼らも間違いなくそのひとつでしょう。しいてあげるならルックスですかね?いや、フィル・メイおっとこ前でカッコいいし、当時の動く映像見てもみんなカッコいいんだけどなあ。裏ジャケに載っている高層ビルを描写したと思われる1曲目”Scene One”のガッガッ、ガッガッっちゅうリフなんて、いかにもロボット化された都会が目に浮かんでくるようで最高っす。当時ローリング・ストーン誌で評価されて、90年代に入ってから再評価されたのがせめてもの救いでしょうか。彼らは76年までに8枚のアルバムをリリースしていて、その最後の3枚に入っている曲は数年前に出たCD4枚組の『ライヴ・アット・ザ・BBC』で個人的には初めてたくさん知ることができました。それがどれもすごくよかったので、このアルバムの次に出た『Freeway Madness』と『Silk Torpedo』も最近UKオリジナルで入手しました。次はそのへんを載せたいと思ってます。ジャケにだまされてはいけん!