商標が非類似とされた例 | SIPO

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審決例(商標):類否174

 

<審決の要旨>

『1 本願商標

 本願商標は、「グラウス」の文字を標準文字で表してなるものであるから、その構成文字に相応して「グラウス」の称呼が生じるものである。また、「グラウス」の文字は、一般的な辞書等に載録された既成の語ではなく、特定の意味合いを有しない、一種の造語と理解されるものである。

 したがって、本願商標は、「グラウス」の称呼が生じ、特定の観念は生じないものである。

 2 引用商標

 引用商標は、赤字で「Glous」(「o」の欧文字の上部にアクセント記号が付してある。以下同じ。)の欧文字を横書きしてなるところ、当該欧文字は、一般的な辞書等に載録された既成の語ではなく、特定の意味合いを有しない、一種の造語と理解されるものである。そして、特定の意味合いを有しない欧文字からなる商標は、一般的には、我が国において広く親しまれている英語風又はローマ字風の読み方に倣って称呼されるとみるのが自然であるところ、引用商標「Glous」の構成中の「glo」を語頭に有する英単語として、「global」(グローバル)、「globe」(グローブ)や「glory」(グローリ)が、我が国においてよく知られた英単語であることから、それらの英語の発音に即して「グロース」又は「グロウス」の称呼が生じると認めるのが相当である。

 したがって、引用商標は、「グロース」又は「グロウス」の称呼が生じ、特定の観念は生じないものである。

 3 本願商標と引用商標の類否について

 本願商標と引用商標とを比較すると、両商標は、全体の外観において、文字の種類、文字数及び色彩において相違するものである。

 なお、我が国において、片仮名や漢字で表された文字を当該文字に相応して生じる称呼に基づき、その称呼をローマ字で表記することが一般的に行われている事情があるところ、造語である「グラウス」の片仮名をローマ字で表記した場合、例えば「gurausu」や「gulausu」の表記が想定し得るものであり、これを「Glous」と表記するとはいえないことから、上記の点を考慮したとしても、本願商標と引用商標とは、外観上、その印象は著しく相違し、判然と区別できるものである。

 また、称呼においては、本願商標は「グラウス」の称呼が生じ、引用商標は「グロース」又は「グロウス」の称呼が生じるところ、本願商標の2音目及び3音目の「ラウ」の音と引用商標の2音目及び3音目の「ロー」の音若しくは本願商標の2音目の「ラ」の音と引用商標の2音目の「ロ」の音が相違し、いずれも短い音構成からなる両商標において、「ラウ」と「ロー」の音若しくは「ラ」と「ロ」の音の相違が、これらの称呼全体に与える影響は決して小さいとはいえず、これらを一連に称呼した場合は、その語調語感が相違し、称呼上、聞き誤るおそれはないものである。

 さらに、観念においては、いずれも特定の観念は生じないものであるから、比較できないものである。

 そうすると、本願商標と引用商標とは、観念において比較し得ず、外観及び称呼において明確に区別できるものであるから、両商標は、相紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。(下線・着色は筆者)』(不服2023-11942)。

 

<所感>

審決は、引用商標の称呼の認定をくるしい理屈をつけて似ていないとした。引用商標の称呼に近い商標について以前は相違する称呼があっても本件のような場合には「ラ」と「ロ」の音はラ行の近似音であるから一連に称呼すると語調語感が相紛らわしいとして類似と判断していたことが多かった。このようなことを考えると、やはり類似の範囲を広くから狭く運用しているように感じる。