商標が非類似とされた例 | SIPO

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審決例(商標):類否161

 

<審決の要旨>

『(1)本願商標について

 本願商標は、「ナナちゃん」の文字を標準文字で表してなるものである。そして、その構成中「ちゃん」の文字は「人名、または、人を表す名詞に付けて、親しみを込めて呼ぶときなどに用いる。」(「デジタル大辞泉」小学館)の意味合いを有するところ、構成文字全体からは直ちに特定の観念を生じないものの、「ナナという人の愛称」のごとき漠然とした意味合いを連想させる場合もある。

 そうすると、本願商標は、その構成文字より「ナナチャン」の称呼を生じ、「ナナという人の愛称」ほどの漠然とした意味合いを連想させるが、特定の観念は生じない。

(2)引用商標について

 引用商標は、カップに口をつけようとしている様子の人間の横顔を描いた図形の下に「NANA CHA N」の欧文字を配してなる。そして、引用商標の構成中「NANA CHA N」の欧文字部分は、「ナナ チャ ン」と発音できるが、辞書などに掲載されていない語である。他方、引用商標の構成中、図形部分は、カップに口をつけようとしている様子の人間の横顔を描いてなるものの、具体的な称呼や観念は生じない。

 そうすると、引用商標は、その構成文字に相応して、「ナナ チャ ン」の称呼を生じるが、特定の観念は生じない。

(3)本願商標と引用商標の比較

 本願商標と引用商標を比較すると、外観においては、図形の有無及び文字種の相違により、構成全体としては、印象が異なる。また、称呼においては、構成音を共通にするものの、一連の語として称呼される本願商標に対して、引用商標は「ナナ」と「チャ」と「ン」の間が区切って発音されることから、全体の語調、語感による印象は異なるものになる。さらに、観念においては、いずれも特定の観念を生じないから、比較できないものの、漠然と連想させる意味合いにおいて差違がある。

 そうすると、本願商標と引用商標とは、観念において比較できないとしても、外観及び称呼において印象が異なるから、これらの外観、称呼及び観念等によって、取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、両商標は、その出所について相紛れるおそれはなく、類似の商標とは認められない。(つまり、非類似の商標である)(下線・着色は筆者)』(不服2023-16711)。

 

<所感>

審決は、上記のように判断したが、取引者・需要者が取引に際し称呼につき納得感が得られるであろうか。特に「引用商標は「ナナ」と「チャ」と「ン」の間が区切って発音されることから、全体の語調、語感による印象は異なる」とした点である。迅速な取引の実情に鑑みれば、文字の前後に多少のスペースが開いていても一連に称呼されるので、全体としては本願商標と同様に「ナナチャン」と称呼されるのではないだろうか。私には類似の範囲をできるだけ狭くしたい意向としか思えない。