商標が非類似とされた例 | SIPO

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審決例(商標):類否160

 

<審決の要旨>

『(1)本願商標

 本願商標は、ヤギと思しき動物を擬人化したキャラクター図形(以下「キャラクター図形」という場合がある。)を表し、その下に、キャラクター図形の胴部とほぼ同じ横幅からなり、枠線に沿ってステッチを施したピンク色地の横長長方形内に「ユメ」の文字(以下「文字部分」という場合がある。)を白抜きで表した構成よりなるものである。そして、キャラクター図形と文字部分とは近接して表示されていることや、キャラクター図形の一部に彩色されたピンク色及び赤色が、文字部分に施されたピンク色と同系色であることも相まって、構成全体としてまとまりよく表されているといい得ることから、構成中の「ユメ」の文字は、そのすぐ上に位置するキャラクター図形の名称又は愛称を表したものと無理なく理解、認識できるものである。

 そうすると、本願商標からは、その構成中の「ユメ」の文字に相応して「ユメ」の称呼が生じ、また、構成全体から「「ユメ」という名称又は愛称のヤギと思しき動物を擬人化したキャラクター」ほどの観念が生じるものと見るのが相当である。

(2)引用商標

 ア 引用商標1は、「夢」の文字を標準文字で表してなるところ、当該文字は「睡眠中に持つ幻覚。空想的な願望。」等を意味(「広辞苑第7版」株式会社岩波書店)する一般に慣れ親しまれている語であるから、その構成文字に相応して、「ユメ」の称呼を生じ、「睡眠中に持つ幻覚。空想的な願望。」等の観念を生ずる。

 イ 引用商標2は、「YUME」の文字を標準文字で表してなるところ、当該文字は、一般の辞書類に掲載されている既成の語ではないが、我が国において親しまれた英語読み又はローマ字読みに倣って自然に称呼される「ユメ」の称呼は、「睡眠中に持つ幻覚。空想的な願望。」等を意味(前掲書)する一般に慣れ親しまれた「夢」の語に通ずるものであるから、引用商標2よりは、上記アと同様に「ユメ」の称呼を生じ、「睡眠中に持つ幻覚。空想的な願望。」等の観念を生ずる。

(3)本願商標と引用商標との類否

 本願商標と引用商標との類否について検討するに、外観においては、キャラクター図形の有無及び構成文字の文字種を片仮名と漢字若しくは欧文字と異にすることから、明確に区別することができるものである。

 そして、称呼においては、「ユメ」で同一であり、観念においては、本願商標から生じる「「ユメ」という名称又は愛称のヤギと思しき動物を擬人化したキャラクター」と、引用商標から生じる「睡眠中に持つ幻覚。空想的な願望。」等とは、観念上、明らかに区別し得るものである。

 そうすると、本願商標と引用商標とは、称呼が共通するものの、外観及び観念においては明確に区別することができるものであって、本願商標及び引用商標の指定商品及び指定役務において、取引者、需要者が、専ら商品及び役務の称呼のみによって商品及び役務を識別し、商品及び役務の出所を判別するような実情があるものとは認められず、また、称呼による識別性が、外観及び観念による識別性を上回るとはいえないことから、両商標が与える印象、記憶等を総合してみれば、商品の出所について誤認混同を生じるおそれのない非類似の商標というのが相当である。(下線・着色は筆者)』(不服2023-7703)。

 

<所感>

審決は、「外観・観念」対「称呼」で前者が優位するとの判断である。ただ観念の対比が判断を左右したように感じる。いずれにしても称呼より外観の類似性を重く見る近年の傾向が反映されている。称呼が同一でも外観を違わせれば類似しなくなるということである。

 これに対して、原審(原査定)では次のように真逆の判断している。「本願商標の構成中の「ユメ」の文字と引用商標1及び2の構成文字は、外観において、片仮名表記と漢字表記の差異もしくは片仮名表記とローマ字表記の差異、及び白抜き文字と標準文字の差異があるものの、いずれも特徴のない書体で表されたものであり、商標の使用においては、商標の構成文字を同一の称呼が生じる範囲内で文字種を相互に変換して表記したり、白抜き文字で表されることが一般的に行われている取引の実情があることに鑑みれば、両者における上記文字種の相違や白抜き文字で表すことが、取引者、需要者に対し、出所識別標識としての外観上の顕著な差異として強い印象を与えるとまではいえません。また、両者は、「ユメ」の称呼及び「睡眠中に持つ幻覚」「将来実現したい願い」の観念を共通にするものです。以上を総合すると、本願商標と引用商標1及び2とは、その外観上の差異を称呼及び観念の共通性がしのぐものといえ、両者は相紛らわしく出所の混同を生ずるおそれのあるものです。」