商標が非類似とされた例 | SIPO

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審決例(商標):類否159

 

<審決の要旨>

『本願商標は、丸みを帯びた濃い青色の長方形状の枠内に、上部に「ADS」の文字及び「INTERNATIONAL」の文字(以下「文字部分」という。)を濃い青色で2段に横書きし、その下部に、水面と、水中でダイビングをしている人物及び魚とおぼしき絵柄を配した図形(以下「図形部分」という。)からなるところ、文字部分と図形部分は、いずれも同じ枠内に表されてはいるものの、上下にそれぞれ重なり合うことなく、独立して表されていることから、視覚上分離して看取し得るものである。そして、構成中の図形部分は、特定の意味合いを表すものとして認識されているとはいい難く、これよりは、特定の称呼及び観念を生じないものである。

 一方、文字部分については、上段の文字と下段の文字が、同色、かつ、文字幅をそろえて、バランスよく配置されていることから、視覚的にまとまりよく一体的に表された印象を与えるものであって、構成文字全体から生じる「エイディエスインターナショナル」の称呼も無理なく一連に称呼し得る。

 そして、本願商標の構成中、「ADS」の文字は、「広告(Advertisings)」、「自動データシステム(automated  data  system)」、「自動診断システム(automatic  diagnostic  system)」(「英辞郎on  the  WEB」株式会社アルク)等の意味を有する略語であるものの、本願商標の指定役務との関係で直ちに特定の意味合いを想起させるとはいい難いものであり、また、「INTERNATIONAL」の文字は、「国家間の、国際的な、国際上の」(出典:「ベーシックジーニアス英和辞典第2版」株式会社大修館書店)等の意味を有する語であるとしても、上記のとおり、文字部分のまとまりのよい構成にあっては、文字部分全体で一体の造語を表してなるものと理解されるとみるのが相当であって、いずれかの文字が、自他役務の識別標識として強く支配的な印象を与える、もしくは自他役務の出所識別標識としての機能を有しない部分として省略されるとは考え難い。

 そうとすると、本願商標に接する取引者、需要者は、その構成中の「INTERNATIONAL」の文字を捨象し、「ADS」の文字部分のみに着目して取引に当たるというよりは、むしろ本願商標の構成文字部分全体をもって取引に資されるというのが相当である。

 してみれば、本願商標は、その構成全体から「エイディエスインターナショナル」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。

 したがって、本願商標の構成中、「ADS」の文字部分を分離抽出し、これを前提に、本願商標と引用商標とが類似する商標であるとして、本願商標が商標法第4条第1項第11号に該当するとした原査定は、取消しを免れない。(つまり、非類似の商標である)(下線・着色は筆者)』(不服2023-11396)。

 

<所感>

本審決も前回の審決と同様な判断をしている。本願商標の図形部分と文字部分はいずれも同じ枠内に表されてはいるものの、上下にそれぞれ重なり合うことなく、独立して表されていることから、視覚上分離して看取し得るとして文字部分だけの抽出も可能としたうえで、その文字部分である「ADS」と「INTERNATIONAL」の一体不可分性を肯定している。商標の要部の認定に際してこのような要部認定はやはり類似の範囲を狭くする論理なのであろう。文字と図形の結合商標を志向する出願者にとって一つの参考となる事案である。