商標が非類似とされた例 | SIPO

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審決例(商標):類否156

 

<審決の要旨>

『(1)本願商標

 本願商標は、「JI-TAN」の欧文字を横書きしてなるところ、当該文字は、辞書類に載録された既成の語ではなく、特定の意味合いを想起させる語として知られているともいい難いことから、造語として看取、把握されるものである。そうすると、本願商標は、その構成文字に相応し「ジタン」の称呼を生じ、特定の観念は生じないものである。

(2)引用商標

 引用商標は、「時」と「短」の漢字の間に、当該文字の約4分の1程度の大きさで表された「JITA-N」の文字を配した構成よりなるところ、その構成中の「時」と「短」の文字は「(時間短縮の略)労働時間の短縮。作業時間の短縮。」(「デジタル大辞泉」株式会社小学館)の意味を有する語として一般に親しまれた「時短」を表すものであり、また、「JITA-N」の文字は、「-」(ハイフン)を介しているものの「時短」の文字の読みを欧文字表記したものと認識し得るものといえる。そうすると、引用商標は、その構成文字に相応し、「ジタン」の称呼を生じ、「(時間短縮の略)労働時間の短縮。作業時間の短縮。」の観念を生ずるものである。

(3)本願商標と引用商標との類否

 本願商標と引用商標との類否について検討するに、両者は、それぞれ前記(1)及び(2)の構成よりなるところ、外観においては、「時短」の文字の有無及び欧文字部分の「-」(ハイフン)の位置が相違することから、判然と区別し得る。

 そして、称呼においては、「ジタン」の称呼を同じくするものである。

 また、観念においては、本願商標は特定の観念を生じないものであるのに対し、引用商標は「(時間短縮の略)労働時間の短縮。作業時間の短縮。」の観念を生ずるものであるから、両者は、相紛れるおそれのないものである。

 してみれば、本願商標と引用商標とは、「ジタン」の称呼を同じくするものの、外観において判然と区別し得るものであり、観念において相紛れるおそれのないものであるから、これらが取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合的に勘案すれば、本願商標と引用商標とは、相紛れるおそれのない非類似の商標というのが相当である。(下線・着色は筆者)』(不服2023-3422)

 

<所感>

審決は、称呼よりも外観・観念を優先している。これだけ称呼が同じであるにもかかわらず称呼を軽く考えるのには少し抵抗がある。古くは少なくとも称呼が同一又は類似すれば類似と判断して本審決と真逆の審決が多かったように思っているので、尚更である。この傾向はいつまで続くのだろう。やはり出願して登録する商標が増える現況を考えるとその交通整理をするため全体の類似の範囲を狭めて登録しやすくすることなのだろうか。