商標が非類似とされた例 | SIPO

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審決例(商標):類否155

 

<審決の要旨>

『(1)本願商標について

 本願商標は、「レリーズ」の文字を標準文字で表してなるものであるから、その構成文字に相応して「レリーズ」の称呼が生じる。

 そして、「レリーズ」の文字は、辞書等に載録のない造語であるから、当該文字からは、特定の観念は生じない。

(2)引用商標について

 引用商標は、「Reliz」の文字を表してなるところ、当該文字は、辞書等に載録のない造語である。そして、特定の意味を直ちに理解させることのない造語にあっては、我が国において広く親しまれているローマ字読み又は類似の英単語の読みに倣って称呼されるとみるのが自然である。そうすると、引用商標は、ローマ字読みに倣えば、「レリズ」と称呼され、「re」が「リ」と発音される英語の接頭辞であることや、「return(リーターン)」、「remember(リメンバー)」などの親しまれた英単語に照らせば、英単語の読みに倣うと、「リリズ」と称呼されるものといえる。

 そうすると、引用商標からは、「レリズ」又は「リリズ」の称呼が生じ、特定の観念は生じない。

(3)本願商標と引用商標の類否について

 本願商標は、片仮名で「レリーズ」の文字を表してなり、引用商標は欧文字で「Reliz」の文字を表してなるものであるから、両者の外観は明らかに相違するものである。

 また、本願商標と引用商標は、いずれも特定の観念を生じないから、観念上比較することができない。

 そして、本願商標から生じる「レリーズ」の称呼と、引用商標から生じる称呼のうち「レリズ」の称呼は、長音の有無において相違するにすぎないから、称呼上、類似するものであるといえるが、同一ではない。また、本願商標から生じる称呼は、引用商標から生じる称呼のうち「リリズ」とは、語頭の「レ」と「リ」の音、長音の有無において相違するから、称呼上、類似しないものである。

 以上を総合的に勘案すると、本願商標と引用商標の外観は大きく異なっている上、称呼上も、類似する場合だけでなく異なる場合もあるから、たとえ両商標が、観念につき比較できないとしても、両商標には誤認混同のおそれがなく、類似していないというべきである。(つまり、非類似の商標である)(下線・着色は筆者)』(不服2023-7313)。

 

<所感>

審決はアンダーライン部から本願商標と引用商標が例え称呼において類似していても同一でなければ、外観と観念も考慮すると非類似と判断したものと思う。過去には称呼のみが類似していても全体として類似するとの判断が多かったように思えるので、少し違和感がある。参考に記すと原審の判断は次のようである。すなわち『本願商標と引用商標の類否について検討すると、本願商標の「レリーズ」の称呼、及び引用商標の「レリズ」の称呼は、第二音「リ」における長音の有無というわずかな差異があるにすぎず、他の音は全て同じですから、両者をそれぞれ一連に称呼するときは、語調及び語感が近似したものとなり、聴き誤るおそれがあるといわざるを得ません。また、観念については、いずれも造語と認められることから比較することができず、外観について差異を有するとしても、両者は共に文字のみからなる商標であり、特徴のある外観を備えるものとは認められないものですから、これらを総合的に考察すると、両者は互いに類似する商標であると判断するのが相当です。』と・・