商標が非類似とされた例 | SIPO

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審決例(商標):類否146

 

<審決の要旨>

『商標法第4条第1項第11号について

 ア 本願商標について

 本願商標は、頭部の形状に特徴のある、緑色や赤色等からなる人型のキャラクター図形と思しき図形を表し、その下に「ナミー」の文字を横書きしてなるものである。そして、その構成中の「ナミー」の文字は、辞書類に掲載のない造語といえるものであるから、上述のような構成態様において、同「ナミー」の文字は、そのすぐ上に位置するキャラクター図形の名称又は愛称を表したものと無理なく理解、認識できるものである。そうすると、本願商標よりは、その構成中の「ナミー」の文字に相応して「ナミー」の称呼が生じ、また、構成全体から「「ナミー」という名称又は愛称の、人型のキャラクター」ほどの観念が生じるものとみるのが相当である。

 イ  引用商標について

 引用商標は、薄橙色や黄色等からなる、何らかの生物を擬人化したキャラクター図形と思しき図形を表し、その下に「ナミー」の文字を横書きしてなるものである。そして、上記アと同様に、その構成中の「ナミー」の文字は、そのすぐ上に位置するキャラクター図形の名称又は愛称を表したものと無理なく理解、認識できるものである。そうすると、引用商標よりは、その構成中の「ナミー」の文字に相応して「ナミー」の称呼が生じ、また、構成全体から「「ナミー」という名称又は愛称の、何らかの生物を擬人化したキャラクター」ほどの観念が生じるものとみるのが相当である。

 ウ 本願商標と引用商標の類否について

 本願商標と引用商標を比較するに、外観においては、それぞれの構成中に大きく表されているキャラクター図形の形状や色彩が異なり、明確に区別することができるものである。そして、称呼においては、「ナミー」で同一であり、また、観念においては、「人型のキャラクター」と「何らかの生物を擬人化したキャラクター」という点において、明確に区別することができるものである。

 そうすると、本願商標と引用商標とは、称呼が同一であるとしても、外観及び観念においては明確に区別することができるものであって、本願商標及び引用商標の指定商品において、取引者、需要者が、専ら商品の称呼のみによって商品を識別し、商品の出所を判別するような実情があるものとは認められず、また、称呼による識別性が、外観及び観念による識別性を上回るとはいえないことから、両商標が与える印象、記憶等を総合してみれば、商品の出所について誤認混同を生じるおそれのない、非類似の商標というのが相当である。(下線・着色は筆者)』(不服2023-3442)。

 

<所感>

審決は称呼の同一はあるにしても外観と観念で区別可能なので非類似と判断した。取引者・需要者における商品識別の判断が専ら称呼のみによるとは認められないとはいえ、あくまでも外観優先的な発想である。この判断は従来から長年の間踏襲されてきた称呼の判断の大きさを捨て去った内容と思わざるを得ない。実際に本件における原審(審査官)の判断は「本願商標と引用商標は、全体の外観は類似しないとしても、本願商標の要部を構成する「ナミー」と引用商標の要部を構成する「ナミー」は、同一の文字列からなること、「ナミー」の称呼を共通にすること、及び観念によって両者を区別し得るとも言い難いことから、本願商標と引用商標の外観、称呼及び観念を総合して観察した場合に商品及び役務の出所につき誤認混同を生ずるおそれがある類似の商標です」というものであり、審決とは異なる。観念が比較できない事案において、外観と称呼のどちらを採るかとの判断によるので、今後もこのような審査と審判で異なる運用が交錯するのではないかと思われる。