商標が非類似とされた例 | SIPO

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審決例(商標):類否140

 

<審決の要旨>

『(1)本願商標について

 本願商標は、「シン・クラウド」の文字を普通に用いられる方法で横書きしてなるところ、その構成文字に相応して、「シンクラウド」の称呼が生じるものである。また、当該文字は辞書等に載録されている既成の語ではなく、本願商標の指定役務との関係で直ちに特定の意味合いを想起させるともいい難いから、造語として看取されるものである。したがって、本願商標からは、「シンクラウド」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。

(2)引用商標について

 引用商標は、「ThinkLoud」の文字を標準文字で表してなるところ、その構成文字に相応して、「シンクラウド」の称呼を生じ、「Think」の文字は、「思う」等の意味を、「Loud」の文字は「うるさい」等を意味するいずれも広く知られた語(いずれも「ベーシックジーニアス英和辞典第2版」株式会社大修館書店)であるから、「うるさいと思う」ほどの観念を生じるものである。

(3)本願商標と引用商標との類否について

 本願商標と引用商標とは、外観において、その構成態様、文字種等において、明らかな差異があるから、これらは、外観上、著しく相違するものである。

 次に、称呼においては、本願商標と引用商標からは、いずれも「シンクラウド」の称呼が生じ、称呼は共通するものである。

 また、観念においては、本願商標は特定の観念を生じないものであるのに対し、引用商標は、「うるさいと思う」ほどの観念を生じるものであるから、観念上、これらは相紛れるおそれはない。

 そうすると、本願商標と引用商標とは、「シンクラウド」の称呼を共通にするとしても、外観及び観念において、相紛れるおそれはないから、これらを総合して全体的に考察すると、これらの商標は、非類似の商標というべきである。(下線・着色は筆者)』(不服2023-5388)。

 

<所感>

 称呼が類似していても外観と観念が相違するから全体として類似すると認定している。ここでも外観優先のようである。判断基準としての外観・称呼・観念のうち二つが類似するのだから全うな気もするが、かつての称呼を重視していた審査になじんでいた者からすると近年運用の変更をしたように感じる。調査に当たってはこの運用変更を踏まえ、出願可否を考えていかなければならないと思う。