東日本大震災が発生した時、自分は、「もうこの世は終わったのだ」と思った。地震と津波でめちゃくちゃになった町。音がない。人々は黙っって歩いた。徒歩で、そして自転車で。
井戸水、湧き水、澤水、川、堀から水を汲んだ。
電気がないので、太陽が沈むと眠り、太陽と共に起きた。
夜、ローソクを囲んだ。庭で火を炊いて調理した。
町内会を中心に数々の支援物資をいただき、卓上コンロには火力の強さに感激した。
おにぎりやパンはとてもありがたかった。菓子パンや調理パンはもちろんおいしかったが、各自でアレンジできる食パンや白いごはんもよかった。分かち合うローソクと食料を思い出す。
自衛隊のお風呂に通う。髪を洗った時の安堵の喜び。
その人は自分の家を流失したのに、「自分は、まだ、ましだ。誰かを亡くしたわけじゃないから。」と言う。「物は買えるけど、犠牲になった人は帰ってこない。」と。
しばらく、周りに気をつかいながら笑うようになった。周りに誰かを亡くした人がいるかもしれないから。大きな声で笑えない。
雪がちらつき、寒い3月11日だった。そして夜空にきらめく星を私は見た。