【スワローズ妄想劇場】

「終走式~最後の盗塁~」

...11月23日。

晴れ渡った青空の神宮に響く歓声。
下克上を成し遂げたスワローズにとって、まさにお祭り騒ぎのファン感謝デー。
そして、その最後を飾るのは今年で引退を決めた俺の挨拶だった。

アナウンサーの「福地さん、マウンドへ」と言われ、普段立つ事のなかったマウンドに立つ。
日本シリーズで活躍しMVPを取った時の映像をバックに一通りの挨拶をした。

つもりだ。

よく覚えてない。

そして仲間が集まって胴上げ。

1回、2回、3回。さあ、俺の現役生活も終わりだ...と思ったが胴上げから降ろしてくれない。
「おい、恥ずかしいから降ろしてくれよ!」

と叫んだが、それを待っていたかのように俺はそのままファーストまで運ばれて降ろされた。
「福地さん、これを」

そう言って比屋根が差し出したのは最後まで使っていたスパイクだった。

アナウンサーの声がする。

「さあ、これより福地選手の『終走式』を行います!」

仲間がポジションに散っていく。

(そういう事か)

照れ笑いを隠しつつスパイクに履き変え、盗塁の構えを取った。

村中-川本のバッテリー。
ゆっくりとリードを取る...と、村中がこちらをチラリと見た

「うわっと!」

村中が牽制してきたので慌てて頭から滑り込む。

村中が

「僕ら本気でやりますからね!」
とニヤリと笑う。

「刺せるもんならやってみろ!」
と笑って返す。

ヘルメットを取って汗を拭う。

ファーストの畠山が「そのクセ、治りませんでしたね」と笑う。

「何?」
と聞くと

「福地さん、走ると決めた時に牽制されるといつもよりメットを高く上げて汗を拭うんです」
「今になって言われても..みんな知ってるのか?」
「ええ、なんでも応援団の奴も知ってて、そのタイミングで走れとか言うらしいですよ。まあ、分かってても刺せませんけどね」

そういうと畠山は目線を捕手に向けた。

(お前は来年鍛えてやるよ)

と思いながら俺も本気モードに入る。

村中のモーションが始まる。
いつも通り右足をセカンドに向けて力を込め一歩目。
2歩、3歩...川本がキャッチ。

(間に合わんか?)

自分の衰えに少し気落ちしながらも加速を続ける。

川本が投げた。

(この足がセカンドにたどり着いたら、本当に終わりなんだな)

いつまでもたどり着きたくない気持ちも湧いたが、野球人の本能はそれを許さなかった。
ギリギリのタイミングで足から滑り込む。
滑りながら見上げた空はまだ青かった。

その空を白い線が超えていく。

(あれ?)
ボールは福地とベースのはるか上を超え、センターへと抜けて行った。
セカンドに入っていた田中が

「福地さん、行ってください!」
と叫ぶ。

(そうか、そういう事か)

直ぐに起き上がりサードへ走り出す。

ショートにいた川端が

「今まで有難うございました!」
と声をかけてきた前を軽く手を上げながら走り抜ける。

サードへ滑り込もうとした時、城石コーチがいつもの様に手を回していた。

サードを回る。

慎也さんが

「俺より早く辞めやがって!」
と叫んで軽く背中を押す。

「お先に、です!」
と笑って走り抜ける。

ホームベースの周りには仲間が待っていた。

手にバケツを持って。

(寒いだろうな)

と苦笑いしながら頭から滑り込む。
手荒い歓迎。
輪の中で泣いていた川本に

「ありがとうな」

と声をかける。

ただ俯いて

「いえ...いえ...」

と言うばかりだった。
フォローするように宮本が川本の肩を抱く。

つば九郎とのアイコンタクトが終わると、バケツの儀式が待っていた。

水は相変わらず冷たかったが、でもそれ以上に暖かいものに包まれながら、福地はもう一度、胴上げされていた。(完)

【おまけ】

福地「ありがとうな」

川本「いえ...いえ...」
(どうしよう..宮本さんに『引導渡すから本気で刺せ』って言われてたのに...やっちゃった.(涙))

宮本(肩を抱きながら)「おい川本、このあと時間あるか?」

川本「ひっ!・・・は、はい...」(やべえ・・・特守か?)

宮本「『終走式』は終わったがこの後戸田で古久保コーチの『終1000本ノック式』があるからな。」

川本「は、はいっ!よろこんで受けますとも!」

宮本「その後で俺のノックで特守な?」

川本「は、はい・・・」

(おしまい)
【スワ妄ショートストーリー】

《東京アナザーグラウンド》



佐藤ヘッドコーチから「監督、そろそろ時間ですよ」と声をかけられ我に返った。



「ん、ああ。」



と、慌てて返したが、思いのほか気の抜けた返事になってしまい自分で苦笑する。



(監督か。2年目も終わろうとしているのに、そう呼ばれるのは、まだ慣れないな)



スワローズ荒木監督はそんな事を考えながらベンチから立ち上がった。

3年前、勝ち星に恵まれなかったスワローズは、交流戦でも借金を重ね、高田監督が休養するしないでマスコミが大騒ぎになった。



今日負けたらいよいよ...という所でその試合か雨で中止。

翌日の引き分けを挟んで、それまでがウソのように勝ち続け、休養もなく、終わってみれば借金を完済していた。



だが、監督は退団を申し入れ球団も了承。

次期監督として既定路線だった投手コーチの荒木を指名した。



その時ヘッドコーチだった佐藤は高田監督と一緒に退団す意向だったが、荒木が引き留め、現在もヘッドコーチとして活躍している。



(良く残ってくれたよ。若い奴らにとっては俺は言い方キツいからな)



キツい言い方をする自分と選手の橋渡しをしてくれていることに素直に感謝していた。



荒木は神宮のグラウンドに出て辺りを見回した。満員のお客さんと報道陣。



(やっと来たなぁ)



苦しい戦いの中、3位でペナントを終え、CSを突破。

今夜は日本シリーズ初戦なのだった。

グラウンドでは選手が練習中。



投手コーチの時の癖だろうか、まず投手達を見渡した。



石川、館山。

ドライチ5兄弟の村中、増渕、由規、赤川、斉藤佑。

みな怪我せずにやってくれた。



そして打者のゲージには今年2000本安打を達成した彼が立っていた。



「調子はどうだ?」



荒木が聞くと



「問題ないです。いよいよ日本シリーズですね!」

と細身の顔をクシャッとして笑った。



「古巣相手じゃやりにくいか?」



と聞くと



「いえ、FAで来た甲斐がありましたよ」



と彼が答えた。



「そうか、頼んだぞ。稲葉。」



そう声をかけると、稲葉の後ろで一緒にいた男が声をかけてきた。



「監督、よろしくお願いします。」



と頭を下げてきたので、握手しながら声をかけた。

「同じドラフトだったね。2000本安打おめでとう!」



と言うと今やパ・リーグを代表する宮本慎也が



「ありがとうございます」



と照れながら笑った。



(その年のドラフト今思えばファイターズのスカウトは凄かったな)



稲葉、宮本を取ったスカウトの事を思った。



(でもあれは確か..)



「監督!早く来て下さい!」



佐藤コーチの声を聞いて慌ててホームベースに向かう。

メンバー表の交換。

ファイターズの監督がホームベース近くで待っていた。



見慣れた顔。



そう、ファイターズの監督は今年からスワローズのOBが勤めていた。



「荒木監督、久しぶりで」

「ええ、こちらこそ」



一通りの挨拶を終えたところで



「菅野は4戦目あたりですか?」



とファイターズの先発の探りを入れたが



「いや、それは...」



と笑ってごまかされた。



「しかし、理想の上司として、今や時の人ですね」

と言うと



「そんなことないよ。みんなが良くやってくれてるだけだよ」



...現役最後の年、スワローズからファイターズに移籍後、そのままスカウトとして宮本と稲葉を取り、長く二軍監督として選手を見、今年から一軍の監督になって快進撃。



ファイターズの小川淳司監督はそういって笑った。

小川監督と握手をしている時、



(そうか。小川さんがスワローズに戻ってスカウト、二軍監督、そしてコーチという事も有り得たのかな)



写真撮影が終ってベンチに戻るときも続きを考えていた。



(そうすると、2年前のあの時、俺以外の選択肢があったわけだ。もし、あの時小川スワローズだったら、俺は何をしていたんだろう?)



そこまで考えたとき、首を大きく振った。



(いや、所詮、仮定の話。今以上に幸せな事など無いと信じるしかないんだ)



もう、迷わない。



荒木監督はどっしりとベンチに腰掛けた。

場内には



「一回の表、ファイターズの攻撃、一番ショート山田哲人」



のアナウンス。



いよいよ荒木スワローズ初の日本シリーズの始まりだ。(終)



【あとがき?】結局の所、「だれがこうだったら良かった」とか「あのプレーがこうだったら」とか、それが今以上に幸せな結末を迎えていたかなんて誰にもわからない訳で。

野球に限らず、今あった結果を受け止めて明日も頑張るしかないのかなと思う次第。読んで頂き有難うございました。

あの場面で小川さんがやらないという選択肢は無かったと思う。

で荒木監督にするためには「小川さんが初めからいなかったことにする」しかないかなと。

そうすると稲葉はともかく宮本はファイターズに行ってたかも。

で、こんな話になりました。



宮本ファン、山田ファンの人ごめんなさい。
【スワローズ妄想劇場】
YS戸田寮怪奇ファイル

ファイル0『調査開始』

雨の降る夜、川端の部屋をノックする音がした。

「失礼します・・」

そっと入って来たのは新人の山田であった。
顔が幾分暗い。

「どうしたんた?」

川端が話を聞こうとすると、待っていたかの様に話し出した。

「この寮、おかしな噂多くないですか?金縛りとか幽霊話とか・・」

川端が苦笑しながら

「まあね、でもそんなのは気持ちの問題だよ。」

と、開けっぱなしだったドアから赤川が顔を出し

「いや、分からないよ?何せお祓いしても収まらないんだからなぁ・・」

と山田をからかう。
山田が更に顔を青くして

「止めてくださいよぅ。苦手なんですから・・」
と震えた。

これじゃ本気で練習に打ち込めないな・・・
川端は少し考えて

「まあまあ、じゃあ、皆で噂を一つ一つ検証してみようよ。それで原因がわかれば気にせず練習に打ち込めるだろ?」

と言った。

「ぼ、僕も一緒にですか?」

山田はこれ以上無いという位に顔を青くした。

「だって、現場にいなきゃ原因を納得出来ないだろ?」

と川端が山田を頷かせると、赤川は嬉しそうに
「寮の噂話募集」の張り紙を書き始めた。

(ファイル1『13階段』へ続く)

ファイル1『13階段』

食堂への張り紙の効果は絶大で、張り紙の前に置かれた箱にはたくさんの投書が入れられた。
そして赤川がその1つを無造作に引いて読み上げる。
赤川が引いた紙を読み上げる。

「Y.Mさんからの投稿で、えー、K.A投手とY.N捕手が一緒のベットで・・うあああっ!」

と、叫んでその場で紙を破り捨てる。
笑いを堪える川端。

赤川が息を切らせながら新たに紙を引く。

「えー、M.Mさんからの投稿で、深夜、三階の踊り場から四階へ昇る時、12段の筈の階段が13段になっている時があります。是非調べてください。ですって。」

山田が

「13階段なんて死刑台じゃないですかぁ・・僕4階なのに・・」

と泣きそうになる。

川端が

「気のせい気のせい。実際に数えてみようよ」

と言い、三階の踊り場までやって来た。
懐中電灯に浮かび上がった階段は、昼間とは全く違い不気味だった。

赤川が

「じゃ、俺行くっす!」

と、幅2m程の階段を駆け上がっていった。

「1.2.3...11.12!」

まで数えた。
これで終わり・・・と次の足を踏み出した時、足に違和感を感じた。
12の次の段があったのだ。

「・・・13?」

顔を前に向けたまま、目線と懐中電灯を下に向けた。

壁の端から黒々とした13段目が延びている。

端からスーッと照らしていく。
そして、反対側の端に光が当たった時、そこに顔があった。

「うわああ!」

と、驚いた赤川が階段から転げ落ちてくる。

山田が腰を抜かす。

と、13段目が声を上げる

「あれ?みんな、どうしたの?」

山田が気付く。

「・・上野さん?」

川端が

「上野、何でそんな所に寝てるんだ?」

と聞くと

「寮のベットは狭くて、はみ出すんだよぅ。ここは身長とジャストフィットで寝やすくて。宮出さんに教えて貰ったから・・。」

寝惚けた上野に川端が

「分かったからちゃんと部屋で寝てください!」

と言うと

「ふぁい」

と言って部屋に戻って行った。

「・・・だから言ったろ?山田。何もないんだよ。はい、次!次!」

と言って次の現場に向かった。

(ファイル2『入居者を受け入れない部屋』へ続く)

ファイル2『入居者を受け入れない部屋』

三人は三階に降りてくると、「314」と書かれた部屋の前で止まった。

「ここが次の怪奇スポット。何でもここは入居すると原因不明の頭痛に襲われるとか・・」

と、赤川が説明した。

「た、祟りとかですか?」

と山田が言うと

「前の前に住んでいた選手が解雇で居なくなったからねぇ。怨みとか籠ってるかもよ・・・」

と赤川が追い打ちをかける。

「とにかく、入ってみようよ」

と川端が震える山田を促した。

鍵は開いていた。

三人が中に入る。
住人は今、留守の様だ。
懐中電灯で照らされた部屋には家具が並ぶ。

「何も変なところは・・」
川端が言いかけると

「何か・・頭が痛いです・・気持ち悪い・・」
と山田が頭を抱えた。

「大丈夫か?」
川端が抱き抱える。

「何か変な臭いがしてきました・・呪いですよきっと・・出ましょうよ・・」

青くなる山田を抱え三人が部屋を出ると廊下に人影があった。
身構える三人。

「あれぇ?どうしたんですか?」

と人影・・・貴規が話しかけてきた。

山田が深く息をしながら「

あ・・ここは貴規の部屋か・・大丈夫なの?」
と聞くと

「何が?・・ああ、この臭いか。」と笑い出した。

「だいぶ前に住んでたラミレスJrが使っていたお香の臭いが取れないんです。前に住んでた兄貴も苦労したみたいですけど・・」

とファブリーズ片手に入って行った。
三人はフラフラしながら

「次行こう・・」

とエレベーターに向かって行った。

(ファイル3『幽霊エレベーター』へ続く)

ファイル3『幽霊の乗るエレベーター』

異臭を放つ部屋から解放された三人はエレベーターに辿り着いた。
赤川が立ち止まる。

「えっと、次の怪奇スポットはこのエレベーター。このエレベーター、誰もいないのに2階で停まるんです。」

そう言って下りのボタンを押してエレベーターを呼び出した。
三人が乗り込み、1階のボタンを押す。

ドアが閉まり、下がっていくエレベーター。

しかし、エレベーターは手前の2階で停止しドアが開く。さあっと冷たい空気が入り込んでくる。三人が降りて辺りを見渡すが誰もいない。

山田が

「誰もいないですよ・・」

と震えながら言う。
背後でエレベーターが閉まり降りていく。

「うわぁ!」
と叫ぶ山田に川端が

「落ち着け!1階を押したのは俺達だろ!」
と、諭す。

・・・少しの静寂の後、カツン・・と何か音がした。
三人が音の方を振り返る。

カツン、カツン・・

エレベーター脇の階段から音がする。

「幽霊が・・上がってくる?」

山田が赤川にくっつく。
階段から人影が現れる。

「あれえ?どうしたんですか?」

人影の主、三輪が声を上げる。

「三輪?どうした?」
川端が聞くと

「あ、交差点のセブンイレブンに行ってたんですよ。」

そう言って買い物してきた袋を見せる。

山田が
「い、今、エレベーターが勝手に止まったんですよ!ここで!」

とエレベーターを指差す。

三輪は
「エレベーター?ああ、呼んだはいいけどエレベーターが来るの遅くてイライラしちゃって・・結局いつも階段で降りちゃうんですよ。」

三人が顔を見合わせる。

「あー・・そういう事か・・・でもさっき行ったばかりで、随分帰って来るの早いねえ」と川端が言うと三輪が自分の足を叩き「何言ってるんですか。僕の足ですよ?」

と言ってニヤリと笑った。

(ファイル4『風呂の怪物』へ続く)

ファイル4『風呂の怪物』

三人は眠い目を擦りながら風呂場へと着いた。

「この風呂場には怪物が出るらしいんですよ」
赤川が言うと

「この話は聞いた事ないですが・・どんな怪物ですか?」
と山田が聞き返す。

赤川が懐中電灯を自分の顔に向けて

「なんでも、顔が亀で体も亀とか。」

と答えると

「それじゃ亀じゃん。」

と川端が突っ込む。

「ま、まあ、とにかく見てみましょうよ」

赤川が戸を開ける。
真っ暗な風呂場。
懐中電灯で辺りを照らす。

と、大きな浴槽に何か動くものがあった。

「誰だ!」

と川端がそれを照らす。

「あれ?皆さんも風呂ですか?」

と照らされた中村が眩しそうに答えた。
山田が風呂全体の電気をつける。

「こんな時間に風呂ですか?」
「独りでゆっくり入りたいんだよ。みんなと一緒だと気まずくて。」

脇に置いてあったペットボトルの水を含んで水鉄砲の様に山田に吹き掛けた。

「わっ!と、ところで風呂に怪物が出ると聞いたけど、知りませんか?」

水をかわしながら山田が聞くと

「怪物?知らないよ。」

と言うので、

「そうですよね、怪物なんていないですよね!」

と山田が明るく答えた。

「じゃあ、皆さんごゆっくり。僕はあがりますから。」

湯船からあがる中村。
と、三人の視線が中村の体の一部に集まる。

「これは・・怪物だね。」
「ええ。怪物ですね。」
「怪物というか、ガメラですね。」

三人はやるせない表情で中村を見送った。

(ファイル5『座敷わらし』へ続く)

ファイル5『座敷わらし』

一向に現れない怪奇現象に、山田はある可能性に気づきはじめニヤニヤし始める。
と、赤川がドアの前で立ち止まり

「最後の現場はこの食堂。二人組の座敷わらしが踊っているらしいんだ」
と言って入るように促す。

ドアノブに手をかける山田。

「・・・えーっと、川端さん。中に誰が居るか読めてしまったのですが・・」

山田の問いかけに
「あー、やっぱり?俺もそうだと思う。」

と言うとドアを開けて中に向けて言った。

「俺ら眠いから行くわ、お疲れ!」

とドアを閉め立ち去ろうとする。

すると中からバタバタと足音がしてドアが開き、子供の姿の二人組が飛び出してきた。

「ちょっと!ずっと待ってたんだから、ちゃんと絡んで下さいよ!」

とマルモリダンスの格好で叫ぶ由規と貴規。
爆笑する三人。
と、背後から声がした。

「全く、みんな演技が下手なんだよな」

(ドッキリ大成功!)と書かれたプラカードを持った上田と、その後ろをゾロゾロとついてくる今夜の出演者達。

「山田が噂話にビビッてるから何とかしろと真中監督の命令でね。ほら、あの人はスワローズのドッキリに関しては第一人者だからね。」と上田が笑い出した。

山田が
「皆さん、もう大丈夫です!」
と吹っ切れた表情で笑った。

「怪奇現象なんてないんだよ。本当にあったら俺だって寮を出てるよ」
と川端が声をかける。

上田が
「最後に写真撮って解散するぞー」
と号令をかけて皆で肩を組む。
フラッシュがたかれ、みんな部屋に戻っていった・・・。

写真は翌朝、中村が壁新聞風に加工し食堂に張り出された。
川端が見ると全員が懐中電灯で顔を照らした写真に

「怪奇現象解明される!」

と見出しがつけられていた。

振り返るとみんな集まってワイワイと見ていた。
中心にいる山田がイジられている。

視線を写真に戻す。

(全員、良い笑顔で・・・全員?)

硬い表情になって、もう一度写真をよく見る。

全員笑顔で写っている。

全員。

全員で。

「・・上田、カメラ誰に渡した?」
「えーと、『私撮りますよ』って言われたんで渡したけど、誰だったかな?」

と見回すがみんな首を振る。

「皆、カメラを受け取ってないのか。じゃあ、皆が写っているこの写真、誰が撮ったんだ?」
皆、表情を凍らせ、山田は卒倒し、川端は寮を出ることを決意した。(完)
【スワローズ妄想劇場年末SP】
「飯原誉士2011・テイク2」

12月も終わろうとしているこの時期、戸田へ自主トレを見に来るファンはまばらだ。
肌寒い中で飯原は土手の階段を昇降して汗を流していた。

(今シーズンは酷かったな)

単純動作なので頭では色々な事を考えていた。

昨年は活躍出来たが、今年はキャンプで不調。
開幕スタメン落ち。
結局最後まで修正出来なかった。

(良いところはCSのホームランだけだったな)

大観衆の中、手応えと快音を残してスタンドに吸い込まれていくボール。
今でも感触が残っている気がする。

(そう。俺は打てるんだ。もともと力はあるんだ。)

少しだけ、ほんの少しだけそう考えた飯原の足の動きが少しだけ緩慢になった。
しかし、足場の悪い土手でその油断はまさに命取りだった。

(え?)

と思う間もなく飯原の視界は地面と空が交互に入れ替わり、そのうち真っ暗になった。

・・・気付くと下に人が倒れていて、その回りをチームメイトが囲んで何か叫んでいる。

(誰か転んだのか?)

飯原が覗き込むと、目が細い人だった。
あのアニメのキャラクターに似ているが現実にいる訳もなく、倒れているのは間違いなく自分だった。

(あ?あ?)

状況が理解出来ない飯原の背後から声がした。

「ようこそ、こちらの世界へ。」

振り向くと真っ白な髭を生やした老人が浮かんでいた。

「うわあ!浮いてる!」

と叫ぶと老人は

「何を言っておる。貴様も浮いておろうが。」

と言って飯原の足元を指した。

足元を見る飯原が

(どうなってるんだ・・・?)

と考えたのを読んだかの様に

「お前は今、転んで死んだんだよ。」

と老人が言い放った。

「そんな事急に言われても・・って、あなたは誰なんですか?」
「貴様の世界では『野球の神様』と呼ばれておる。」
「神様?神様が何の用で?」
「本来、お前の寿命はまだまだあるのにドジを踏んで死んでしまった。まだまだ楽しい事も予定していたのに。なので、その分を還元したあとに『あの世』に連れて行ってやろうと思ってな。何か希望はあるか?」
「じゃあ、生き返りたいです。新婚なんですよ?僕は。」

と飯原は即答した。

「ワシは野球の神様だからな。野球関係しか叶えられんよ。」

神様の返答に飯原はしばらく考えた後、

「・・じゃあ、今シーズンをやり直したい。これなら野球関係ですよね?どうですか?」
「む・・そう来たか。」

神様は少し考えたあとにこう言った。

「分かった。但し条件がある。やり直す時間はシーズン終了まで。そして、せっかくやり直すのだから、手抜きをしたり同じ時に同じ結果になったら即終了。どうだ?」

と言うと飯原は

「分かりました。要は同じ失敗をしなければ良いんですね。」

と答えた。

「よし、決まりだ。当然だが今年の記憶は消すからな。」

そう言って神様は杖を振ると飯原は白い光に包まれた。

「・・らさん、飯原さん!」

そう呼ぶ声で飯原はハッと目を覚ました。
どうやらうたた寝していたらしい。

「スタメンじゃないからって寝てちゃ駄目ですよ!」

と川島慶三が笑う。

飯原は回りを見渡す。

「・・・ここは?」

見慣れない球場に戸惑う。

「何言ってるんですか。UPR宇部球場ですよ!」

震災の影響で今年の開幕は延期され、この球場が開幕戦だった。
スコアボードを見ると今は6回。
ジャイアンツ相手に0-2で負けていた。

まだぼんやりしている飯原に

「いま、目の醒めるような打撃見せますからね!」

そう言ってバッターボックスに向かう川島慶三。

飯原は

(今、川島に何か大事な事を言わなければいけない)

と、心の何処かでそう思ったが、それが何だか思い出せない。
飯原は仕方なく見送るしかなかった。

翌日、前日に右手を骨折した川島に代わり川端がスタメンに入ったが、飯原は代打要員だった。
好投の内海の前にスコアボードに0が並ぶ。

そして7回。

伊勢コーチに

「由規のところで代打だ。行ってこい!」

と言われて慌てて打席に立つ。
2アウト。

(あまり期待されてないな)

と思った。

ピッチャーは内海。
良い投手だが飯原は内海だけはカモにしていた。

(大丈夫。やれる!)

振り抜いた打球は三塁の手前で大きく跳ね、ライアルの頭を越え2ベースになった。

「よっしゃ!」

ガッツポーズを決める飯原。
続く青木、田中も代わった久保からヒットで2点を返して1点差。
そして9回。
宮本の代走、鬼崎をセカンドに置いてもう一度打席が回ってきた。

(ここで打てなきゃ、いつまでも濱中さんがスタメンだっ!)

気合いを込めて山口から放った打球はセンター前に飛び同点になった。
ベースの上でもう一度ガッツポーズする飯原。 #swamou
スワローズ妄想劇場 @swa_mou 2011-12-31 13:35:21

そして試合は続く青木が勝ち越しタイムリーを決め、開幕カードを一勝一敗で乗り越えた。
そして試合後、飯原は小川監督に呼ばれ、次のカードのスタメンを言い渡された。

・・・こうしてこの日、歴史の歯車が切り替わった事を飯原を含め誰も知らない。

神宮の開幕戦は3番レフトでスタメンだった。

何か沸き上がるような感情が自分を突き動かしているのが分かる。
ヒットも出たし盗塁もした。
そして1点リードで迎えた8回表・・

(え?前進?)

レフトの守備に着く飯原は目を疑った。
伊勢コーチが手招きしている。
バッター吉村で守備位置を前進しろと言うのだ。
飯原は両手を広げてアピールするも伊勢コーチは大きく手招きをする。

(分かりましたよ。でも僕は背走苦手ですからね、頭抜かれても知りませんよ!)

と、思いきり前に出た。
大きなモーションから松岡が投げた。

吉村のスイングから放たれた打球は飯原の少し前へ飛んできた。

「って、来たあああ!」

走り出す飯原。

(2アウトだし、捕れなかったらゴメンナサイだっ!)

意を決してダイビングする。
グラブに軽い感触があった後、彼の体はゴロゴロと転がった。
起き上がり後ろを振り向く。

誰もボールを追いかけていない。

恐る恐るグラブを開くとボールが収まっていた。

「アウトっ!」

審判のコールの一瞬あとに沸いた歓声に包まれながらベンチに戻る飯原。
チラリとブルペンを見ると日高がホッとした表情で投球練習をしている。
この日、日高が登板することはなかった・・・。

スワローズは飯原の活躍もあり、この日から引き分けを挟んで10連勝。
スタートダッシュに成功した。

このあとも飯原は活躍し続けた。
5月、雨の中行われた北陸での中日戦でサイクルヒット。
シーズン終盤に勢いの落ちてきた時もチームを引っ張って行った。

そして直接対決。

ナゴヤドームでの2連戦、4連戦をタイで切り抜け、優勝を成し遂げた。

飯原は野球が楽しかった。
楽しくて仕方なかった。

永遠に今年の野球が続けば良いと思った。

そしてクライマックスシリーズ。
中日相手に初戦を取った2戦目。
今日はチェン相手に苦戦を強いられてた。

疲れが出てきたナイン。
打線が繋がらない。

そして0-0で迎えた9回。

ランナー無しで飯原に打順が回って来た。

(俺が決めてやる!)

気合いは入っていたが何故だか余裕があった。
カウント2-2に追い込まれた時も配球が手に取るように分かった。

(うんうん、知ってる。この後スーッとど真ん中に来た球をギリギリホームランにするんだ。今期1号。遅いよね。あはは。・・・え?)

思わず打席を外してタイムを取る。

(なんで俺は配球を知ってる?1号?)

そこで全ての記憶が蘇った。

(俺は・・・今年二回目のCSなのか。)

打席に入り直しスコアボードに目をやる。

神宮の時計は・・・あの時のナゴヤドームと同じ時間を差していた。

イニングは違うがチェンからホームランを打つ。
同じ時に同じ結果だ。

ゲームオーバー。

でも、わざと打たなければ手抜きでゲームオーバー。

(結果は一緒か。詰んだな。ならば。)

俺は野球が好きなんだ。

球場で完成に包まれながら死ねるなら本望じゃないか。
少なくとも寒い土手で転んで死ぬよりはずっといい。

「本当のサヨナラホームランか。」

飯原の呟きに谷繁が首を傾げる。
チェンが投げ込んでくる。
知っている球筋。
逃すはずは無かった。

飯原の最後のスイングがら放たれた打球は今年1回目のそれと同じ弾道を描きレフトスタンドに吸い込まれた。
爆発する喚声に包まれダイヤモンドを回る。
サードコーチとハイタッチしてホームへ向かう。
みんながベースの周りを囲んでいる。
その外で宮本と福地がバケツを持って待っている。
今年何回も繰り返された光景。

(でも何回やっても良いもんだな。)

そう思いながらベースを踏んだ瞬間、目の前が真っ暗になった・・・。

「人生の延長戦はどうだったか?」

闇の中に浮かび上がった神様がそう言った。

「はい。楽しかったです。でも・・・」

飯原は口ごもった。

「でも、実際に優勝したいです。日本一になりたいです。やっぱり僕は野球が好きでたまらないんです。」

そう言う飯原に神様は

「最後の打席、わざと打たなければ本当に魂を運ぶつもりだったぞ?」

と優しく言った。

「え?それじゃ・・・」
「もう一度、思い切り野球をして来い。ただ、手を抜くようなら次は無いぞ?」

そういって神様が杖を振ると飯原の魂は体へと向かっていった。

そして、魂の戻った飯原の体は唐突に起き上がり、2、3度首を振ると心配する仲間を制して自主トレを続ける為に全力で土手を登り始める。

飯原を満足そうに見下ろす神様。

と、後ろからふわりと青白い竜が飛んで来て

「また助けたんですか?」

と呆れたように言った。
神様は白い付け髭を取って

「全く、400年経ってもあいつの魂は成長せんな!」

と笑いながら言った。

竜は

「本当に彼を育てたいんですね。」

と、神様に、にこやかに話しかけた。

神様・・・いやこの世界では伊勢コーチという姿をした伊勢大明神は竜の問いには答えず

「さてと、温泉に・・・」

と言い掛けたが

「駄目ですよ!もう伊勢神宮にお帰りになってもらわないと参拝される方に申し訳ないです。私が宮司さんに怒られてしまいます。」

と竜に言われてしまった。
神様は仕方なく竜の背に乗り伊勢神宮に向かう。

しばらくして

「大明神様、他の選手は助けないのですか?」

と竜に言われて

「そんなことは無いが、どうした?」
「いえ。あそこでイム選手の車が故障して困っているようで・・・」

見やるとイムが煙を吹くポルシェの周りでウロウロしていた。

「あ、イムは助けられんよ。」

と言われ、竜は困惑したように

「なぜですか?日本人じゃないからですか?」

と言うと

「別に国籍は関係ないが・・・」
「じゃあなぜです?」

と竜がさらに尋ねると伊勢大明神は片方の眉毛を上げながら言った。

「神に仏は助けられんよ。」【完】
【スワローズ妄想劇場】
潜水艦ス-77航海日誌「練習航海」

秋は足早に立ち去り、いつもより早く冬の足音が近づく港町。
付近の街は西洋の聖者の誕生日を祝う飾り付けが始まっていたが、この港は未だ殺風景である。
(仕方ない。ここは軍港なんだからな)

真新しい塗装を施された艦を見ながら艦長の真中はそう思った。
鯨のような艦体の真ん中に立つ司令塔には真新しいペンキで「ス77」と書かれていた。

だが新造艦ではない。

激戦をくぐり抜け、大破したス-80を改修し改名した艦だった。

大本営に転属となった前任艦長から水雷長であった真中が艦長として引き継ぎを受け、今朝、海軍工廠から修理の終わった艦(といってもまだまだ修繕の余地があったが)を引渡された。
元の乗組員が召集され、これから四国沖まで練習航海に向かうのだ。

真中は司令塔の前に立ち、2、3回軽く叩くとクルリと回れ右をして艦首の方を向く。
そこには乗組員達が整列していた。

「新任艦長の真中だ。これより練習航海に向かう。配置に付け!」

威厳を込めた声で訓示をすると、士官や乗組員達が一斉に敬礼をした。

(怠けてはいなかったようだな)

機敏な動きで艦内に向かう乗組員達を見て真中は満足そうな顔をした。
艦の修理が整うまでの間、乗組員達は地上で訓練をしており、皆、引き締まった顔と身体をしていた。

「艦長、そろそろ我々も」

と新任副長の三木が声をかける。

「うむ」

そう頷いて梯子を登り、司令塔の上に登る。

そして、気が付いたように軍港を、そしてその向こうにある街を眺める。
今年の戦果が芳しくなかったせいか、賑わいも淋しく見える。

今、艦長という立場になり、無理に威厳をもった行動をしていたが元来、酒とお祭り騒ぎが好き真中は

(来年の今頃帰港したときは、楽しげな街に変えてやるさ)
と、ニヤリと笑った。

「艦長?」

中々艦内に進まない真中に見張長の宮出が声をかける。

「あー、すまんすまん。すぐ入る」

長年のコンビである宮出に急かされ我に返り、真中は床に開いた丸く狭いハッチから梯子を降りて中に入る。

「あれ?」

首を捻り、再び登る。

「どうしました?」
航海長の高津が尋ねる。

「…先に行ってくれ」
「はあ。」

首を傾げながら高津がハッチから梯子を降りていく。
それを見ながら身体を左右によじる真中。
深く息を吐きもう一度ハッチから梯子を降りる。
そして半分ほど身体を艦内に入れた所で再び止まり小さな声で呟く。

「…らない」
「は?」

宮出が長身を折り曲げて耳を近づけて呟きを聞こうとする。

「その…入らないんだ。腹がつかえて…」

思わず宮出が吹き出す。

「艦長、秋の間に食べ過ぎですよ?」
「馬鹿者!大声出すな!皆に知れたら威厳も何もないだろ!」

待ち構えていたように艦内から山田が真中艦長に声をかける。

「やだなぁ艦長、今更何を言ってるんですか?」
「なんなら腹に石鹸液でも塗って通らせましょうかー!」

石川も後に続いてそう叫んだ。

「もー、仕方ないですねぇ。」

宮出が笑いながら艦長を引っ張りあげる。

三木副長が冷淡な声で

「艦長にはあちらを用意してあります。見張長、お連れして。」
「了解!」

そういうと宮出が真中をヒョイと持ち上げ艦尾に連れていく。

艦尾の突起部分にロープが括り付けてあり、その先にはドラム缶が2つ繋がっていた。

「何を…」
と言う間もなくドラム缶に放り込まれる。

「艦に入れないのでは仕方ありません。しばらくそちらで我慢して下さい。」
「ま、まて宮出!」
という声を聞いてか聞かずか、宮出はスキップするかのような足取りで艦内に入ってしまった。
スクリューが回りだし、艦が微速前進を始めた。

「おい、本気か!宮出!三木!」

叫んだが艦内に聞こえる筈もない。

呆然とする真中。

ふともう一つのドラム缶を見る。

(そうかこの中に飲料水や食料があって、これでしばらく過ごせと…)
と思っているとドラム缶から何か出てきた。

「ども…」
「は、畠山!?」
「私もハッチに入れませんでして…」
「秋の訓練をサボるからそんなになるんだ!」
「艦長に言われたくな…か、艦長!」

畠山が驚いた顔をして艦の方を指さす。真中が振り返ると…艦は潜航を始めようとしていた。
潜航されてしまえば当然…ドラム缶も海の中だ。

「ま、まて!悪かった!ちゃんと体調管理するからっ!」
「私も!ちゃんと走り込みしますから!」

二人は段々と海中に引っ張られ、水没寸前になったドラム缶から声の限り叫んだ…

「そろそろ許してやりませんか」

潜望鏡で波を被るドラム缶を見ていた宮出が笑いながら三木副長に言う。

「率先垂範。士官たるもの見本にならねば。」

三木が顔色1つ変えずに言った。

伊藤機関長が

「まあまあ、今日のところはこれくらいで」

とニヤリと笑いながらハッチを一回り小さくするために使った自信作の木製ダミー枠をクルクル回す。

三木が頷いて

「喫水線まで浮上し停船。艦長と畠山の回収開始せよ」

と命じた。

凪いだ海に停船するとハッチから乗組員達が飛び出してロープを引っ張り、ドラム缶から二人を回収した。

「全くお前らは!なんてことをするんだ!」

と叫びながら再び司令塔に上がってきた真中艦長。

士官達に、まあまあ。艦内で訓練計画を立てましょうと促されると、ブツブツ言いながらもハッチから梯子を降りようとする。

「あ、あれ?」

と声をあげ、士官たちを悲しげにそっと見上げる。

三木副長が溜息混じりに

「回頭180、一旦帰港する」

と北風よりも冷たい声で下令した。

…結局、木枠を取ったハッチからも入れなかった二人は魚雷搬入用ハッチから工廠のクレーンで入れられた。

「ああ、果てしない航海になりそうだ」

高津航海長がそうボヤいた。

潜水艦ス-77航海日誌1頁目「練習航海」完