【スワローズ妄想劇場】
「終走式~最後の盗塁~」
...11月23日。
晴れ渡った青空の神宮に響く歓声。
下克上を成し遂げたスワローズにとって、まさにお祭り騒ぎのファン感謝デー。
そして、その最後を飾るのは今年で引退を決めた俺の挨拶だった。
アナウンサーの「福地さん、マウンドへ」と言われ、普段立つ事のなかったマウンドに立つ。
日本シリーズで活躍しMVPを取った時の映像をバックに一通りの挨拶をした。
つもりだ。
よく覚えてない。
そして仲間が集まって胴上げ。
1回、2回、3回。さあ、俺の現役生活も終わりだ...と思ったが胴上げから降ろしてくれない。
「おい、恥ずかしいから降ろしてくれよ!」
と叫んだが、それを待っていたかのように俺はそのままファーストまで運ばれて降ろされた。
「福地さん、これを」
そう言って比屋根が差し出したのは最後まで使っていたスパイクだった。
アナウンサーの声がする。
「さあ、これより福地選手の『終走式』を行います!」
仲間がポジションに散っていく。
(そういう事か)
照れ笑いを隠しつつスパイクに履き変え、盗塁の構えを取った。
村中-川本のバッテリー。
ゆっくりとリードを取る...と、村中がこちらをチラリと見た
「うわっと!」
村中が牽制してきたので慌てて頭から滑り込む。
村中が
「僕ら本気でやりますからね!」
とニヤリと笑う。
「刺せるもんならやってみろ!」
と笑って返す。
ヘルメットを取って汗を拭う。
ファーストの畠山が「そのクセ、治りませんでしたね」と笑う。
「何?」
と聞くと
「福地さん、走ると決めた時に牽制されるといつもよりメットを高く上げて汗を拭うんです」
「今になって言われても..みんな知ってるのか?」
「ええ、なんでも応援団の奴も知ってて、そのタイミングで走れとか言うらしいですよ。まあ、分かってても刺せませんけどね」
そういうと畠山は目線を捕手に向けた。
(お前は来年鍛えてやるよ)
と思いながら俺も本気モードに入る。
村中のモーションが始まる。
いつも通り右足をセカンドに向けて力を込め一歩目。
2歩、3歩...川本がキャッチ。
(間に合わんか?)
自分の衰えに少し気落ちしながらも加速を続ける。
川本が投げた。
(この足がセカンドにたどり着いたら、本当に終わりなんだな)
いつまでもたどり着きたくない気持ちも湧いたが、野球人の本能はそれを許さなかった。
ギリギリのタイミングで足から滑り込む。
滑りながら見上げた空はまだ青かった。
その空を白い線が超えていく。
(あれ?)
ボールは福地とベースのはるか上を超え、センターへと抜けて行った。
セカンドに入っていた田中が
「福地さん、行ってください!」
と叫ぶ。
(そうか、そういう事か)
直ぐに起き上がりサードへ走り出す。
ショートにいた川端が
「今まで有難うございました!」
と声をかけてきた前を軽く手を上げながら走り抜ける。
サードへ滑り込もうとした時、城石コーチがいつもの様に手を回していた。
サードを回る。
慎也さんが
「俺より早く辞めやがって!」
と叫んで軽く背中を押す。
「お先に、です!」
と笑って走り抜ける。
ホームベースの周りには仲間が待っていた。
手にバケツを持って。
(寒いだろうな)
と苦笑いしながら頭から滑り込む。
手荒い歓迎。
輪の中で泣いていた川本に
「ありがとうな」
と声をかける。
ただ俯いて
「いえ...いえ...」
と言うばかりだった。
フォローするように宮本が川本の肩を抱く。
つば九郎とのアイコンタクトが終わると、バケツの儀式が待っていた。
水は相変わらず冷たかったが、でもそれ以上に暖かいものに包まれながら、福地はもう一度、胴上げされていた。(完)
【おまけ】
福地「ありがとうな」
川本「いえ...いえ...」
(どうしよう..宮本さんに『引導渡すから本気で刺せ』って言われてたのに...やっちゃった.(涙))
宮本(肩を抱きながら)「おい川本、このあと時間あるか?」
川本「ひっ!・・・は、はい...」(やべえ・・・特守か?)
宮本「『終走式』は終わったがこの後戸田で古久保コーチの『終1000本ノック式』があるからな。」
川本「は、はいっ!よろこんで受けますとも!」
宮本「その後で俺のノックで特守な?」
川本「は、はい・・・」
(おしまい)
「終走式~最後の盗塁~」
...11月23日。
晴れ渡った青空の神宮に響く歓声。
下克上を成し遂げたスワローズにとって、まさにお祭り騒ぎのファン感謝デー。
そして、その最後を飾るのは今年で引退を決めた俺の挨拶だった。
アナウンサーの「福地さん、マウンドへ」と言われ、普段立つ事のなかったマウンドに立つ。
日本シリーズで活躍しMVPを取った時の映像をバックに一通りの挨拶をした。
つもりだ。
よく覚えてない。
そして仲間が集まって胴上げ。
1回、2回、3回。さあ、俺の現役生活も終わりだ...と思ったが胴上げから降ろしてくれない。
「おい、恥ずかしいから降ろしてくれよ!」
と叫んだが、それを待っていたかのように俺はそのままファーストまで運ばれて降ろされた。
「福地さん、これを」
そう言って比屋根が差し出したのは最後まで使っていたスパイクだった。
アナウンサーの声がする。
「さあ、これより福地選手の『終走式』を行います!」
仲間がポジションに散っていく。
(そういう事か)
照れ笑いを隠しつつスパイクに履き変え、盗塁の構えを取った。
村中-川本のバッテリー。
ゆっくりとリードを取る...と、村中がこちらをチラリと見た
「うわっと!」
村中が牽制してきたので慌てて頭から滑り込む。
村中が
「僕ら本気でやりますからね!」
とニヤリと笑う。
「刺せるもんならやってみろ!」
と笑って返す。
ヘルメットを取って汗を拭う。
ファーストの畠山が「そのクセ、治りませんでしたね」と笑う。
「何?」
と聞くと
「福地さん、走ると決めた時に牽制されるといつもよりメットを高く上げて汗を拭うんです」
「今になって言われても..みんな知ってるのか?」
「ええ、なんでも応援団の奴も知ってて、そのタイミングで走れとか言うらしいですよ。まあ、分かってても刺せませんけどね」
そういうと畠山は目線を捕手に向けた。
(お前は来年鍛えてやるよ)
と思いながら俺も本気モードに入る。
村中のモーションが始まる。
いつも通り右足をセカンドに向けて力を込め一歩目。
2歩、3歩...川本がキャッチ。
(間に合わんか?)
自分の衰えに少し気落ちしながらも加速を続ける。
川本が投げた。
(この足がセカンドにたどり着いたら、本当に終わりなんだな)
いつまでもたどり着きたくない気持ちも湧いたが、野球人の本能はそれを許さなかった。
ギリギリのタイミングで足から滑り込む。
滑りながら見上げた空はまだ青かった。
その空を白い線が超えていく。
(あれ?)
ボールは福地とベースのはるか上を超え、センターへと抜けて行った。
セカンドに入っていた田中が
「福地さん、行ってください!」
と叫ぶ。
(そうか、そういう事か)
直ぐに起き上がりサードへ走り出す。
ショートにいた川端が
「今まで有難うございました!」
と声をかけてきた前を軽く手を上げながら走り抜ける。
サードへ滑り込もうとした時、城石コーチがいつもの様に手を回していた。
サードを回る。
慎也さんが
「俺より早く辞めやがって!」
と叫んで軽く背中を押す。
「お先に、です!」
と笑って走り抜ける。
ホームベースの周りには仲間が待っていた。
手にバケツを持って。
(寒いだろうな)
と苦笑いしながら頭から滑り込む。
手荒い歓迎。
輪の中で泣いていた川本に
「ありがとうな」
と声をかける。
ただ俯いて
「いえ...いえ...」
と言うばかりだった。
フォローするように宮本が川本の肩を抱く。
つば九郎とのアイコンタクトが終わると、バケツの儀式が待っていた。
水は相変わらず冷たかったが、でもそれ以上に暖かいものに包まれながら、福地はもう一度、胴上げされていた。(完)
【おまけ】
福地「ありがとうな」
川本「いえ...いえ...」
(どうしよう..宮本さんに『引導渡すから本気で刺せ』って言われてたのに...やっちゃった.(涙))
宮本(肩を抱きながら)「おい川本、このあと時間あるか?」
川本「ひっ!・・・は、はい...」(やべえ・・・特守か?)
宮本「『終走式』は終わったがこの後戸田で古久保コーチの『終1000本ノック式』があるからな。」
川本「は、はいっ!よろこんで受けますとも!」
宮本「その後で俺のノックで特守な?」
川本「は、はい・・・」
(おしまい)