南青山城では少ない実りを何とかしようと粥の炊き出しを行っていた。
「粥では腹の足しにならぬなあ…」
巨体を丸めながら、ぼそぼそと粥を食べていた畠山がそういうのを聞いて
「いや、畠山殿。我々はあまり働きをしなかったので、これを食べさせてくれるだけでもありがたいと思わねばなりますまい」
と高井が小声で諫めた。
「しかしだ、食わねば身にならん!」
畠山はその場でゴロリと仰向けになった。
(腹が減ったら寝てしまおう。目が覚めたら晩飯だ…)
そう思って目を瞑った。閉じた瞼から透けて秋の日差しが降り注ぐ。と。急に暗くなった。
(日が陰ったか…)
ちょっと目を開けてみる。大きな男が立っていた。
もう少し目を開けた。男の顔がはっきり見えた。
「鬼だ―――――!」
そう叫んで畠山は気絶した。彼にとっての鬼、小川公が立っていた。
図らずも畠山の叫びで注目を集めた小川公は大きな声を出す必要がなくなった。
静かに言い放った。
「広間に家臣団集合。急げ。」
そういって城内に入っていった。
武将たちは慌ててそれに従った。気絶した畠山を除いて。
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「・・・というわけだ。よろしく頼む」
そういって経緯を説明した小川公が皆に頭を下げる。
武将は口々に帰還を祝う言葉を述べる。
「知っての通り皆もこの国の状態は承知しているだろう。民は地獄を見た。だから皆にも地獄を見てもらおうと思う」
「地獄、でございますか?」石川が何かを思いついたように言った。
「ああ。地獄だ。」
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…気絶から復帰した畠山はむくりと起きてあたりを見回す。
(誰もいないじゃないか…おなかすいたなあ…ところで俺は何で気絶を…確か鬼が‥あれ?)
城門に人影があった。ゆっくりと近づいてくる。あたりが暗くなっていたのでよく目を凝らしてみる。あれは・・・
「鬼だ――――――!」
畠山は再び気絶した。
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「まったく。何の話かと思ったら・・・私はお断りしますよ。城代家老など。」
呼び出されていた宮本は呆れたような口ぶりで言い放った。
「まあ、宮本よ、そういってくれるな。若い者を鍛えてほしいのだ。」
「なにを言っているんですか。鍛える価値ありますか?この体たらくども。」
「来年、再来年にはきっと太い幹になる。」
「来年のことなど言っては鬼が笑います」
「その割には笑っていないじゃないか」
「来年の事より以前の問題です!」
二人の会話を聞いていた武将が突然割って入った。
「なるほど。ならば笑わせて見せます。おい、若い奴ら。宮本殿を笑わせろ」
「あ、いや大松。今そういう空気ではないだろう…」
小川公が呆れながら言ったが、結局、膳が用意され、酒の肴にと宴が始まってしまった。
「い、一番上田!一輪車に乗ります!」
軽快に乗り始めたが、
「部屋の中で乗るなど言語道断!没収!」
と宮本が取り上げてしまった。
「2番!大塚と荒木!酒の飲み比べします!」
「おう飲め飲め、二度と起きられないくらいにな」
「・・・」
「さ、3番!西浦!歌を歌い…うわあ!」
周りの武将みんなで飛び掛かって静止した。
「4番!藤井!飛んできた球を華麗に取ってご覧に入れます!」
そういうと藤井は投げてもらった球を飛び込んで取って華麗に投げて見せた。
「どうです!」
「下らん!もし取れなかったらどうにもならん!走りこむのは良いが一旦球を落としてそれから背後に向かって・・・ああもう!こうだ!」
そうして宮本は藤井を上回る美技をやって見せた。
「まったく、来て損したわ!小川殿!私は帰ります!」
帰ろうとする宮本の前に走りこんだ山田が平伏して叫んだ。
「お待ちください宮本様!いま笑えないのであったなら…一年!一年笑うのをお待ちいただきたい!一年後には必ず笑わせて見せます!」
「一年後だと?」
「1年後には必ず成長して、宮本様を笑顔にして見せます…我々は強くなりたいのです」
「ほう、言うたな。」鬼の口元が曲がり、笑った。
「わ、笑いましたな!今確かに笑いましたな!」そう山田が指を差して言った。
「おう、この宮本笑ったわ。ただし笑うのはこの一度きり。儂のいる間、お前らからも笑顔が消えること覚悟しておけ!」
そういって、宮本は広間を出て行った。
「うまくいったな!」「ああ!」荒木と大塚が手を叩きあった。
「ほう、そんなにうれしいか?」川端が尋ねた。
「いや実は、膳にワライダケを煮て仕込みまして。」「食べたら立ちどころに笑ったということで。鬼など恐れるに足らずですなあ!…あれ?」
膳を見た荒木が首を傾げた。
「どうした?」大塚が尋ねた。
「いや、ワライダケの皿が載っていない」
「食べたのでは?」
「いくら鬼でも皿までは食わぬでしょう・・・」
と、廊下を走る音がしたと思ったら、三輪が走りこんできた。
「申し上げます!」
「どうした!」小川公が聞き返す。
「厨房にて、畠山殿が笑い転げて七転八倒しております!ついに気が触れたかと!」
「あ。」「つまみ食いされたか」二人が顔を見合わせたとき、背後から冷たい声がした。
「扇子忘れて戻ってきてみたら…お前ら、この鬼を謀るとはいい度胸だ。これは鍛え甲斐がありそうだ」
鬼が獲物をみつけたとき、こういう感じに高笑いするんだろうな…と皆が思いながらも
(さっき笑うのは一度きりって言ったじゃん…)と誰も突っ込むことなどできるはずもない。
戦国絵巻燕の城2018「鬼の高笑い」おわり