8月20日(金)にシアターコクーンで
「広島に原爆を落とす日」を観てきました。


7月10日につかこうへいさんが亡くなってから
最初に観るつか作品となりました。


1998年のいのうえひでのり演出版はチケットが取れず、
悔しい思いをしました。もう12年前ですか。
小説版は読んでいるので、基本のストーリーは知ってますけど
(続編の『愛人刑事』も読みました)、
これを(稲垣)吾郎ちゃんが演じたというのが不思議。
最も、いのうえ版と小説版はだいぶ内容が違うようですね。
私がつか作品をつか演出で観たのは、
2003年の「飛龍伝」だけとなってしまいました。
しかも当時、仕事サボッて観に行ったんだった…。



作:つかこうへい
演出:岡村俊一


犬子恨一郎/山崎:筧利夫
髪百合子:仲間リサ


アドルフ・ヒトラー:大口兼悟
平沼:馬場徹


重宗:山本亨


スニード:リア・ディゾン
髪今日子:山口紗弥加



2010年、 新聞記者・山崎は、広島刑務所から釈放された。
山崎が5年前に調べていた外務省の密約文書に記された「犬子」の文字。
その後、次々と起こる不可思議な事件。
逃げ惑う山崎を匿ったのは、今日子(山口紗弥加)と名乗る一人の女。
今日子は山崎に、原爆投下の真実を突き止めるよう依頼する。


1941年、広島、髪島の浜。
髪一族の末娘・百合子(仲間リサ)は、ドイツへと出港しようとしていた。
髪島に住む髪一族とは、卑賎の身分の泣き女の一族であり、
また間諜の一族でもあった。
百合子の使命は、ヒトラー(大口兼悟)にアメリカに対し宣戦布告をさせること。
そして原爆が完成したときには、ドイツに落とさせるよう工作すること。
恨一郎と百合子は、遠い昔に夫婦の約束を交わした仲だったが、
百合子は恨一郎を裏切り、去っていった。


今や大佐となった百合子は、恨一郎に敬礼を求め、厳しい目で問いかけた。
「…まだ私を愛してくれていますか?」
「…愛しています。一日もあなたのことを忘れたことはありません」
百合子を乗せた潜水艦イー26号はドイツへと出港していった。


2010年、日米密約を暴かれないために、
米国務省ジェニファー・スニード(リア・ディゾン) が成田に降り立つ。
そして、遂にあばかれる密約の真実。広島に原爆を投下した男とは。
(公式HPより)



小説版を読んで、「観たい」と思った場面が4つ。
・潜水艦が出港するときの敬礼のシーン
・犬子恨一郎が百合子の髪に触れるシーン
・「広島に落とそうと思います。待っていて下さい。
 あなたの頭上に落とします」のシーン
・比治山でエノラ・ゲイを待つ、チマチョゴリ姿の百合子のシーン


一番下のシーンはなかったけれど、上3つのシーンは観られました。
なんかこう、もう、つかさんのメッセージが
これでもかと詰め込まれています。
戦争であり、貴賎の差別であり、民族差別であり、
親子の情、仇ある者への思い、そして恋愛の情…。
犬子恨一郎の母のエピソードがほとんど削られているのは残念。
まぁ、難しいですよね、入れるのは。
2時間弱の戯曲に詰め込まれた膨大な台詞が
筧さんの肉体から迸っている、そんな舞台でした。


原爆投下のボタンを押した者は、間違いなく発狂する。
どれだけの恨みや憎しみがあればボタンを押せるのか。
つかさんはその目線から、この作品世界を広げています。


真実って一つじゃない。
もちろん、広島への原爆投下で14万人の命が失われたという
結果は一つなのだけれど。


今から言ってもせんないことですが、
やはり、つかさんの演出で観てみたかったです。


カーテンコールで、誰もいない舞台に
ピンスポットが当たっている、という演出がありました。
ここに、つかさんがいるんだよ、って。