私が大切にしているのは、自分の信念。
私のそれは、竹のようにまっすぐで、しなる強さを持ち合わせています。
私が、その信念を、どうして頑なに守り続けてきたのか、理由は明確です。
私は、皆さんに大切なことを伝える役目があって、ここに存在しているからなのです。
その役目をただ果たすためだけに、私は書いているのです。
私のミッションは、みなさんが忘れかけているあたたかい何かを言葉で伝えること。
言葉って強いエネルギーを持っているんです。
私は、みなさんそれぞれの道案内はできないけれど、
ひとりひとりに言葉のエネルギーを送ることで、みなさんの灯火を灯したい。。。
ハワイのフォーチュンテイラーに予言された「あなたはベストセラー作家になる」
そして、沖縄のユタの先生に言われた「見えない力を信じて、あなたにおりてくる言葉を綴り続けなさい」
を励みに、文壇デビュー目指して、日々感性を磨き、鈴乃ワールドで話を綴っていますが、
私の作品はまだ世に出ていませんし、まだまだ書く訓練が必要です。
それなので、ここを二つの目的を持って開設しました。
①自分の作品の公開の場
②書く訓練(〆切りを決めて効率よく書く)のための場
(※それなので、コメント欄は設けていません)
上述の私の目的をご理解の上、ご覧いただけますとうれしく思います。
鈴乃を知りたい方は、本ブログへお越しくださいませ
※鈴乃の普段の生活、旅日記などを綴ったブログはこちら → ma*nani通信Akemingのステキな40代
Scene30:ホノルル行きフライト
本日の更新はお休みさせていただきます。
楽しみにされていた皆様、ごめんなさい。
せっかくこちらにいらしてくださったのに申し訳ありません。
よかったらこの機会に最初から読み直してくださいませ!
鈴乃
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機体が静かに揺れて、滑走路をゆっくりと走り始めた。まるで、ゆりかごの中にいるかのように、ゆらゆらと揺れる静かな運行が、琴音の瞼を重たくした。琴音は、読んでいた文庫本を閉じると同時に目も閉じた。
しかしながら、眠りに入っていたのは、ほんの少しの間。琴音は、機体の上昇と共に目を覚ました。
短い睡眠だったけれど、深い睡眠から目が覚めた感覚で、琴音は、しっかりと自分の意識を取り戻した。
機内はまだ薄暗い。琴音が通路側の席から前方を見ると、キャビンアテンダントがシートベルトを締めて静かに座っているのが見えた。もう少ししたら、機内が明るくなって、彼女たちは動き回るのだろう。
琴音は、彼女たちがエプロンをつけて、乗客に食事を給仕する姿を想像した。その、数分後の近い未来の映像は、日本を離れて遠くに向っていることを、確実に琴音に認識させた。
琴音は、機体が離陸するまで、自分は夢の中にいるような気がして、からだは動くものの、心が定まらない状態であった。
(私は、四半世紀ぶりに、あの島へ向うんだ)
琴音は、今、自分がいる場所が空の上であることを認めることで、改めて現実を意識した。地上にいる間は、太平洋を渡ってあの島へ向う事実を信じようとしなかった。でも、実際に自分が空を飛んでいるとなると、心の中でもがいている自分を制止せざるを得なかった。
ここまで来たのなら、と、琴音は、吹っ切れた思いで、思い切って計算してみようと思った。
この世に、アイリーンがいないと思い込んで何年の月日が流れているのだろう、と。
それは、琴音が描いたアイリーンの絵の枚数でわかることだけど、琴音は、その枚数と自分自身を責め続けた年数を合致させることはしたことがなかった。
でも、今の自分ならできると思った。
琴音は、アイリーンが亡くなったこと、アンディが行方不明になったことが原因で、新しい家族を作ることを拒んできた。でも、今回の渡航をきっかけに、その重くのしかかる責めから、自分はそろそろ解放されるべきなのだ、と納得できるようになれたのだ。
(なぜなのかしら)
琴音は、自分にそう問うと、まずは、今の自分の状態に思考をチェンジした。そうして、長年の自分への責めを解消できたのは、響の存在が自分の中に浸透しているから、ということに答えが達した。
響と出会わなかったら、果たして自分は今空を飛んでいるのか?と問うと、答えはNOだった。
(ならば、響くんの何がそうさせたの?)
その答えはなかなか出なかった。
(彼の潜在的な何かが私を動かしているのだわ)
そこまで考えが行き着くと、機内の電気がついた。
琴音は、思考を止めて、エアポート内のブックストアで買ったファッション誌を開け、カラフルな写真が満載のページをめくり始めた。
琴音は、人の潜在的な何かを感じることができた。はたから見たらどんなに悪人であっても、その人の潜在的なものによって、琴音にとってすべての人は善となった。
他人から見たら、そんな琴音は単なるお人よしなのであるが、琴音は昔から「善悪」に対する独自の決まりを持っていて、自分の基準に合わせれば、皆が同じに見えた。
ただ、そんな琴音だから、不意に心に傷が入ることがある。他人がずべて善であるせいで、自分自身が悪となってしまうからだ。琴音は、他人を許す代わりに、自分を許せない人間なのである。
響は、そんな琴音を癒す存在だった。
琴音は、ファッション誌のページをめくる手を止めた。目はカラフルな誌面を追っていても、心の目に浮かぶ映像は、先ほど、出国ゲートで別れた時の響の顔なのである。
琴音は、哀愁漂う響の瞳と目が合った途端、思わずファッション誌のページを閉じた。響の顔が徐々にクローズアップされた。おどおどとした小動物を思わせる潤んだ瞳が・・・
(理由は言葉にできないわ)
琴音は、映像の響の瞳に引き込まれながら、簡単な結論を出した。琴音の感覚でしかわからない響の存在の意味を、わざわざ言葉にする必要があるのだろうか、と思うと、彼が自分を癒してくれる理由を考える意味が見出せなかった。
出会った当初は、惹かれる理由が感覚でしかわからなかったことに、琴音は意味のない罪悪感を持っていた。感覚で感じていたのだから、それを説明することができなくて当然なのに。
でも、琴音は、言葉で説明のできない自分に不信感を持っていた。響の外的なものに興味を持っているのではないか、と自分を蔑み、それが罪悪感とかわって、年下の響に惹かれることはいけないことと、自分にブレーキをかけてきた。
実際、響を気にするようになったきっかけは、響の容姿から漂うものであった。だから、琴音はそんな自分に嫌悪感を持ってしまったのだ。でも、とっかかりはあって当然。それがなければ、響を好きになることはなかったのだから。
琴音は、響と過ごす時間が増すたびに、響に惹かれる理由など考えなくてもいいというところに導かれた。あの、コリドー通りのバーで響とあった夜、自分の心をせき止めていたつっかかりを外してから、琴音は、響が自分を癒す存在であることを素直に認めたのだ。
(お互いが求め合う存在であることの言い訳は必要?好きなんだもの、それだけでいいんじゃないかしら)
琴音の独自の決まりを整理すると、求め合う理由を考えることはナンセンスなはずなのである。自分の感覚で決めたことなのだから。
その琴音の感覚で決定的になったものは、響の透き通るような心、薄い氷のようなはかなさであった。これらが、琴音の心を動かした。
琴音は、響と接する時間が少しずつ量を増すたびに、彼の奥に見えるはかないものに自分の母性が動かされ、響の透き通るような心に無垢なものを見出していった。
アイリーンを育てられなかった悔いが、琴音の中に隠れていた母性を密かに育て、無垢なものに対するあこがれのような気持ちが、アイリーンを産んだ時の感動に近いものをじわじわと琴音の内部に浸透させていったのだ。
響に対する気持ちは、アイリーンを失ったショックによって隠された母性愛に近いものであるということは、琴音自身、気づいていないことだった。
母性愛があふれ始めた琴音。だから、今まで封印してきたアイリーンへの愛を思いっきり外に排出することができるようになったのだ。自分は悪であると責めていた気持ちが、一気になくなったのは、響に対する母性愛が殻を破って溢れ始めたおかげである。
琴音は、不意に、あの時の記憶がよみがえった。今まで夢に出てきて琴音を苦しめてきたあのシーン。アイリーンが亡くなったと知った途端に、母乳が止まってしまったあの日のことを。
ハワイのエイミー宅のリビングルームでその悲しい話を聞かされた琴音は、あまりのショックに顔面の血が引いて蒼白になった。そうして、エイミーの家を飛び出して、海に向った。服のまま海に入り、水平線に向かってもがく琴音は意識がすでになかった。
ロバートとエイミーが琴音を追って、海に消えようとする琴音の命を救った。
浜辺で意識を取り戻し、命を取り留めた琴音。
琴音の中の映像に、エイミーが、側で泣いている姿が映った。
「お客様」
琴音は、現実の声に驚いて、目を見開いた。
「大丈夫ですか?」
やさしい笑顔のキャビンアテンダントが琴音を現実に引き戻した。
「お飲み物はいかがされますか?」
琴音は、自分の頬に涙が伝っていることに気づいて、慌てて手で拭った。
「すみません、嫌な夢をみていました」
ばつの悪そうな顔でそう言って、とりあえず、ビールをオーダーした。
(ハワイに行ったら、この悪夢は消えるのかしら)
琴音は、自分の胸をそっと撫でた。アイリーンに飲ませるはずだったお乳。もう出ることはないのだけど、その抑制してきた母性が、形を変えて琴音を苦しめてきたことは真実だった。
To be continued・・・ Written by 鈴乃@Akeming
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